首都圏CCS株式会社広報紙の全戸配布、山武市はどこまで関与? 開示文書で判明した行政の意思決定と不透明な資金の流れ

首都圏CCS株式会社(MCCS)が発行する広報紙『うみとみらい通信』が、山武市の広報紙『広報さんむ』とともに市内全戸へ配布されていることは、山武ジャーナルでもこれまでに報じてきた。

今回、山武ジャーナルが山武市に対して行った公文書公開請求により、この配布が市の正式な意思決定に基づいて実施されていたことが改めて確認された。

開示された文書からは、山武市が広報紙の印刷前からMCCSと調整を行い、市長名義の文書と一体化させて全戸配布することを決定していた経緯が明らかとなった。

一方、配布に必要な経費はMCCSが負担し、実際の配布業務は山武市シルバー人材センターが請け負っているものの、その契約金額は明らかにされていない。

今回の山武市、MCCS、シルバー人材センターへの取材を通じて浮かび上がったのは、行政が正式に関与する事業でありながら、資金の流れを第三者が検証できないという問題だった。

なお、今回山武市から開示を受けた文書は、ページ下部のリンクから閲覧が可能である。

情報公開請求で確認された山武市の機関決定

山武ジャーナルは8月20日、山武市に対して『うみとみらい通信』の配布に関する行政文書の情報公開を請求した。

請求は8月26日付で受け付けられ、開示決定までの期間は1か月延長された。

今回開示された文書には、『うみとみらい通信』第1号から第3号までの配布に関する起案書や、MCCSと山武市の間で交わされたメールなどが含まれていた。

なお、『うみとみらい通信』はすでに第4号まで発行・配布されているが、今回の請求は第4号の配布前に行ったものである。

開示された3件の起案書は、いずれも山武市環境衛生課が作成し、正式に決裁されたものだった。

文書番号起案日配布日
建環生第131号6月22日7月1日
建環生第177号7月15日8月1日
建環生第251号8月12日9月1日

起案書は、環境衛生課が作成した「市民の皆様へ」と題する小野崎市長名義の文書と、MCCSが発行する『うみとみらい通信』を一体とし、市の広報紙『広報さんむ』と同梱して全戸配布することについて、庁内の決裁を求めるものだった。

配布対象は、市内の2万700世帯である。

起案書には、配布の理由として次のように記されている。

本事業については、市民へ速やかな情報提供を行うこととしていることから、下記により配布してよろしいか伺います。

また、経費負担については、

首都圏CCS(株)が全額負担(印刷、配送委託料等)

と記載されている。

ただし、具体的な金額や積算根拠は示されていない。

ここで改めて確認されたのは、市長名義の公文書とMCCSの広報紙を一体化させ、市の広報紙とともに全戸へ届けることを、山武市自身が行政として正式に決定していたことである。

「うみとみらい通信」への市側の関与

開示されたメールからは、山武市環境衛生課が『うみとみらい通信』の印刷前の段階から、MCCSと具体的な調整を行っていたことも確認できた。

第1号については、市長名義の送付文を広報紙に印刷する際、どのようなレイアウトで配置するかについて、環境衛生課がMCCSに指示していた。

また、第2号と第3号についても、印刷前に市が内容を確認するためのメールのやり取りが記録されていた。

つまり、山武市の関与は、完成した広報紙を受け取って配布するという事務的な手続きだけにとどまらない。

広報紙の制作段階からMCCSと調整し、市長名義の文書を組み込んだうえで、市の広報紙と一緒に市民へ届けていることが公文書で確認された。

首都圏CCS事業は、山武市沖を含む九十九里沖の海底に二酸化炭素の地中貯留を計画する事業だ。

市民生活や地域環境に関わる事業について、市が情報提供を行うこと自体は行政の重要な役割である。

しかし、市が主体となって情報を整理し、市民へ説明することと、特定の民間事業者が発行する広報紙を市の公文書と一体化して配布することは、全く異質である。

配布料金はいくらなのか

今回の情報公開請求で、もう一つ注目したのが配布にかかる費用である。

起案書には、印刷費や配送委託料などをMCCSが全額負担すると記されている。

実際の配布業務を請け負っているのは、公益社団法人山武市シルバー人材センターだ。

そこで山武ジャーナルは、まず山武市に対し、MCCSからシルバー人材センターに支払われる金額を把握しているか、口頭で問い合わせた。

市の説明は、シルバー人材センターとの契約なので、市では把握していないというものだった。

続いてMCCSにも、シルバー人材センターとの契約条件について口頭で尋ねたが、回答できないとの説明だった。

山武市は金額を把握していない。MCCSは回答しない。

そこで、契約のもう一方の当事者であるシルバー人材センターに問い合わせることにしたところ、対応に当たった事務局長T氏の説明は「MCCSに確認したところ、同社から契約金額を開示しないよう求められたため、シルバー人材センターとしても回答できない」というものだった。

そこで筆者は質問の趣旨を変え、シルバー人材センターが一般的な配布業務を請け負う際の料金表や料金規定、算定方法について尋ねた。

MCCSとの契約内容を明らかにできなくても、一般的な料金算定の仕組みなら説明できるはずだと考えたからだ。

ところが、T事務局長はこの質問についても回答しようとしなかった。

MCCSとの個別契約について尋ねているわけではない。それでも一般的な料金規定すら説明してもらえないのであれば、T事務局長とのやり取りを続けても埒が明かない。

そこで筆者は、石橋等会長への直接取材を申し込んだ。

会長への取材にも事務局長が同席

10月26日、山武ジャーナルは山武市シルバー人材センターを取材した。

取材に応じたのは、元山武市職員の石橋等会長と、伊藤喜久夫副会長の2人。そこにT事務局長が書記として同席した。

取材は、同センターが本部を置く市の施設、松尾IT保健センターの会議室で行われた。

筆者が石橋会長に確認したかったのは、シルバー人材センターが一般的にどのような基準で業務の請負料金を決めているのかということだった。

しかし、ここでもT氏は会長と山武ジャーナルの会話に度々口を挟み、MCCSとの契約に関する質問には回答できないという説明を繰り返した。

【T事務局長】その金額のことに関しましては、お電話でもお伝えしましたし、来ていただいた時にもお伝えしましたように、「CCSさんの方にお尋ねください」ということで……。

筆者がMCCSにはすでに問い合わせていることを伝えると、T氏はさらにこう述べた。

【T事務局長】そうしましたら、うちの方でも回答をさせていただけません。CCSさんの方から、「そのことに関しては自分の方に問い合わせをするように、鈴木さんの方にもお伝えしてください」ということを私は言われておりますので。

MCCSとの契約金額について回答できないという説明は、すでに聞いている。

そのために、一般的な料金規定についての質問に切り替え、会長への取材を申し込んだのである。

それにもかかわらず、T氏は会長への質問にも繰り返し割って入ってきた。

「会長はこの契約に関してご存じではない」シルバー人材センターでの強烈な違和感

筆者が石橋会長に一般的な料金の算定方法について質問をしている中で、度々T事務局長が口を挟んでくることに苛立ちを覚えた筆者が声を荒げる場面があった。

【山武ジャーナル】あなたに聞いてるんじゃないんです。私、会長に聞いてるんで、ちょっと黙っててもらっていいですか!

【T事務局長】ただ、会長はこの契約に関してご存じではない……。

【山武ジャーナル】いや、いいんです。私はCCSの契約について聞いてるんじゃなくて、一般論を聞いてるんです。CCSについて聞いてるんじゃないんで、本当に黙っててください。

筆者が尋ねていたのは、MCCSとの契約内容ではなく、シルバー人材センターが一般的にどのような方法で料金を決めているのかということだった。

にもかかわらず、T事務局長はMCCSとの契約に関する質問とし、山武ジャーナルからの質問を執拗に遮りながら対応し続けた。

中でも会長への質問をT事務局長が遮り、「会長はこの契約に関してご存じではない」と説明したことは、強く印象に残った。

「料金表も規定もない」一方で「算定基準はある」

その後、石橋会長から、一般的な配布料金について次のような回答を得た。

【石橋会長】料金表っていうのはないです。ないです。

【山武ジャーナル】規定はあるんですか?

【石橋会長】規定もない。

ところが、別の場面ではT事務局長がこう説明している。

【T事務局長】当然、算定する根本・根拠はありますけれども、今その金額を鈴木さんの方に、仮定の話に対してうちが見積書を出させていただくような回答はいたしませんし、それはお断りさせていただきます。

取材の終盤にも、筆者が改めて確認した。

【山武ジャーナル】ただ、内部では当然、算定基準はお持ちなんですよね? 例えばこういう案件になった時にはどういう基準で出すかという。

【T事務局長】当然です。もちろん会員さんにご迷惑をかけてはいけませんので。

会長は料金表も規定もないという。一方、事務局長は算定基準があるという。

取材中は会長と事務局長の発言が矛盾していると感じていたが、録音を聞き直してみると、必ずしもそうとは言えないことに気づいた。

ポイントは、会員に支払う配分金の算定基準と、発注者に請求する料金の算定基準は、同じものとは限らないということだ。

例えば、シルバー人材センターが広報紙の配布業務を請け負う場合、会員への配分金は配布部数や担当区域固有の条件、作業に必要な時間などを考慮して算定されると考えられる。

会員間に不公平が生じないよう、内部的な基準を設けるのは自然なことだろう。

一方、発注者への請求金額には、会員への配分金だけでなく、事務局の管理費や準備経費なども含まれる。

この点については、T事務局長自身も次のように説明している。

【T事務局長】会員さんが作業する分だけでなく、事務局の準備的な経費も当然含まれますし。

つまり、会員への配分金に算定基準があったとしても、それだけで発注者への請求金額が決まるわけではない。

例えば、会員への配分金の合計が30万円だったとして、そこに事務局経費を10万円加えるのか、20万円加えるのか。

その上乗せ額についても明確な算定基準が存在するのか、存在するとすればどのようなものなのか。

会員への配分金を公平に算定する仕組みがあることと、発注者への請求金額が適正であることは、必ずしも同義ではない。

「おしぼり代に隠されたみかじめ料」の図式

ここで、一つの例え話をしてみたい。

昔、繁華街の飲食店が、暴力団へのみかじめ料を含んだ高額なおしぼりを購入させられていたという話を聞いたことがある。

おしぼり1本の原価はせいぜい数十円。それが、暴力団がみかじめ料をいくらに設定するかによって、おしぼり業者が店へ納入する価格が1本1,000円にも2,000円にもなる、という仕組みだ。

店側の帳簿上は、あくまで「おしぼり代」である。

要するに、実際の業務や商品の対価と、発注者が支払う金額は、必ずしも一致するとは限らない。

今回、筆者が一般的な配布料金の算定方法にこだわったのも、まさにそのためだ。

なぜ一般的な料金の質問にも回答しないのか

T事務局長は取材中、配布期間などの条件によって料金が変わることも説明している。

例えば、同じA4判の紙1枚を配る場合でも、3日以内に配布するのか、10日以内なのか、1か月以内なのかによって料金が変わるという。

それ自体は理解できる。

しかし、条件によって料金が変わるのであれば、なおさら、その料金をどのような根拠で算定しているのかが重要になる。

筆者は、架空の配布業務について正式な見積書を発行してほしいと求めていたわけではない。

一般的な料金算定の仕組みを確認し、MCCSとの契約金額が明らかになった場合に、その妥当性を判断する材料を得たかったのである。

ところが、T氏は一般的な料金の質問にも強く反応し、具体的な算定方法を説明することを拒んだ。

なぜ、MCCSとの契約金額だけでなく、一般的な料金算定の仕組みについても、ここまで回答を避ける必要があったのだろうか。

この疑問は、最後まで解消されなかった。

市の会計を経由しない資金の流れ

ここまで確認できた事実を整理してみよう。

山武市は、『うみとみらい通信』を市長名義の公文書と一体化し、『広報さんむ』とともに全戸配布することを正式に機関決定していた。

配布に必要な経費はMCCSが負担し、実際の配布業務はシルバー人材センターが請け負っている。

ところが、山武市は契約金額を把握していないと説明する。

MCCSも回答しない。

シルバー人材センターも、MCCSから問い合わせを同社に回すよう言われているとして回答しない。

その結果、MCCSが配布業務にいくら支払っているのか、第三者には分からない。

ここで注目したいのが、シルバー人材センターの立場である。

山武市シルバー人材センターは、市の施設である松尾IT保健センターに本部を置き、元市職員が会長を務めるなど、市と密接な関係を持つ公益社団法人だ。

しかし、法人格としては山武市とは別の組織である。

そのため、MCCSがシルバー人材センターに直接支払う委託料は、山武市の歳入や歳出として計上されるものではない。

山武市が正式に配布を決定した事業でありながら、その実施に伴う金銭の授受は、市の会計の外側で行われているのである。

あえて、一つの仮説を提示する

ここからは、あくまで仮説である。

仮にMCCSが、首都圏CCS事業を円滑に進めるため、「地元にお金を落としたい」と考えていたとしたら、どうだろうか。

そこでまず問題になるのは、首都圏CCS事業がJOGMECによる支援を受けて進められている事業であることだ。

そのような事業において、地元対策費や交際費といった名目で多額の支出を行えば、後に使途の妥当性を問われる可能性がある。

一方、地域住民への周知を目的とした広報費であれば、事業に必要な経費として説明しやすい。

しかし、山武市が直接その資金を受け取れば、市の会計記録に残り、情報公開請求などによって金額や使途を検証できる可能性がある。

そこで、市とは別法人であるシルバー人材センターがMCCSと直接契約し、広報紙の配布業務を請け負う。

山武市は配布を正式に機関決定する一方、金銭の授受には直接的に関与しない。

そうすれば、MCCSからシルバー人材センターに支払われる金額は、市の会計には現れない。

そして、MCCSもシルバー人材センターも契約金額を明らかにしなければ、第三者は資金の流れを追うことが難しくなる。

さらに、そこにはT事務局長の言葉をそのまま借りると、「会長はこの契約に関してご存じではない」とする契約が存在する。

このような仕組みであれば、正規の広報費という名目で、通常の配布業務に必要な金額を超える資金を支出することも、理屈のうえでは可能になる。

重ねていうがこれは仮説なので、決してこのような事実があると指摘するものではない。

問題は、山武市、MCCS、シルバー人材センターの三者の関係によって、このような仮説さえ成立させてしまうほど不透明な資金の流れが生じていることである。

問われる行政の中立性

そして、今回の問題には、配布料金とは別に、もう一つ重要な論点がある。

行政の中立性である。

首都圏CCS事業は、地域の環境や安全に関わる大規模な事業だ。

事業の推進に賛成する市民もいれば、反対する市民もいる。安全性について判断するため、さらに詳しい情報を求めている市民もいるだろう。

山武市には、そうした市民に対して、公平な立場から必要な情報を提供する役割がある。

しかし、今回開示された文書が示しているのは、山武市がMCCSの発行する広報紙について、市長名義の文書と一体化させ、全戸配布することを正式に決定していたという事実だ。

では、首都圏CCS事業に反対する団体が、同じように市内全戸へ資料を届けたいと申し出た場合、山武市は同様の対応をするのだろうか。

印刷費や配送委託料を全額負担すれば、市長名義の文書を添え、『広報さんむ』とともに全戸配布してもらえるのだろうか。

もしそうでないとすれば、事業者の広報活動に対して行政が特別な便宜を図っていることにならないだろうか。

これは、配布料金が適正であるかどうかとは別の問題である。

仮にMCCSからシルバー人材センターに支払われた金額が適正だったとしても、山武市が特定の民間企業の広報活動に、どこまで協力することが許されるのかという疑問は残る。

求められるのは情報公開

最後に誤解のないよう申し上げるが、山武ジャーナルは「そこに何かの不正があるのではないか」という指摘をしているのではない。

山武市が機関決定した広報紙配布事業について、誰が、誰に、いくら支払い、その金額がどのような根拠で決められたのかを、市民の前に明らかにすることを求めるものである。

MCCSとシルバー人材センターの契約金額が明らかになり、その算定根拠が示されれば、誰もが支出の妥当性を検証できる。

一方、金額も算定根拠も明らかにされないままでは、適正だったという判断さえできない。

山武市は、うみとみらい通信の配布について「市民への速やかな情報提供」を理由に挙げている。

それならば、その情報提供がどのような契約と費用負担によって実施されているのかについても、市民に対して明らかにする必要があるのではないだろうか。

行政が正式に関与した事業の資金の流れが、行政自身にも把握できず、市民にも検証できない。

今回の情報公開請求と取材によって浮かび上がったのは、まさにその問題である。


山武市開示文書

首都圏CCS事業者との打ち合わせ報告書

うみとみらい通信第1号の送付について

うみとみらい通信第2号

「うみとみらい通信第2号」に係る市送付文について

うみとみらい通信第3号の送付(首都圏CCS)

建環生第131号

建環生第177号

建環生第251号

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