
4月12日、山武市長選挙が告示された。
山武ジャーナルでは、告示日の朝、小野崎まさき候補が県会議員だった当時に制作された、いわゆる政治活動用の「2連ポスター」が、市内の複数箇所に掲示されていたことを報じた。

しかし、その後これらのポスターは、告示日当日の夕刻までに撤去されている。
この一連の動きについて、公職選挙法との関係を整理してみたい。
公職選挙法とは?
公職選挙法とは、有権者の自由な意思を守り、候補者同士がフェアに戦うための法律で、真に有権者の代表としてふさわしいリーダーが選ばれ、日本の民主主義が正しく健全に発展していくことを目的に定められた法律である。
そのため、投票の見返りに金品を授受したり、師弟関係、雇用関係、商売上の取引関係といった立場の優位性を使って投票を強要するなどといった行為が禁止されているだけでなく、経済力や知名度など多寡によって特定の候補者が有利、または不利にならないよう、選挙活動の方法についても細かく規定され、制限されている。
原則1:選挙期間前の「事前運動」は禁止
選挙が告示または公示される以前、投票を呼びかける「事前運動」を行うことは、公選法第129条によって禁止されている。
「〇〇に投票をお願いします」と言った直接的な呼びかけは言うまでもなく、多数の有権者に対して氏名や顔を大きく掲載した挨拶状の送付、チラシの配布、ポスターの掲示なども、間接的な「事前運動」とみなされる可能性が高い。
原則2:選挙期間中は、公選法で定められた選挙活動以外は禁止
選挙期間中に候補者が行うことができる選挙活動は、公選法で細かく規定されている。選挙活動ができる時間帯、選挙カーの台数、運動員や人数など、全て法律で詳細に規定されている。
チラシやポスターなどの印刷物についても、サイズや枚数、掲示場所などが明確に定められており(公選法第142条第1項、第143条第1項)、今回の山武市長選挙の場合、チラシは16,000枚までの配布、ポスターは市内202箇所に設置された公設掲示板に各候補1枚ずつ掲示することが認められている。
チェックポイント:小野崎候補の2連ポスターはなぜ許されていたのか?
告示前
告示前に氏名と顔を大きく表示したポスターを掲示するのは、公選法で禁止された「事前運動」みなされる可能性が極めて高い行為である。
しかし、一方で日本国憲法では全ての国民に「政治活動の自由」が保証されていることから、「日頃の政治活動の告知」という体裁をとれば、公選法を回避することができる。
小野崎候補のポスターの場合、
- 氏名と顔を石井準一参議院議員と同じ面積で表示する
- 2名の「弁士」による「演説会」の告知という「政治活動」の体裁をとる
これらの条件により、直ちに公選法違反とされない掲示物として成立していた。
ただし、公選法に定めのないこのような政治活動用の2連ポスターには、長年の取り締まりの運用から生まれた「弁士A、弁士B、演説会告知部分がそれぞれ概ね3分の1ずつ」という暗黙の慣習、いわゆる「3分の1ルール」が存在する。
小野崎候補のポスターはデザインの点では3分の1ルールに準拠しているように演出されているが、演説会の告知部分は全体の4%以下の極めて狭小なスペースに書かれており、日時や場所についてはよほど近づいてみない限り判読できない小さな文字で表示されている。また、日時も「8月17日午前4時」とだけ書かれており、「何年」かは明示されていないことから、告知としてはほぼ機能していない状態だった。
このような2連ポスターは全国各地に見られるが、直ちに公選法に抵触するものではないとはいえ、実質的に事前活動としての性質が極めて高いものと言える。
告示後
前述の通り、告示後に公設の掲示板以外に選挙活動用ポスターを掲示することは、公選法第143条第1項及び第4項の規定により明確に禁止されている。
では、「政治活動用」ポスターはどうだろうか?
公選法第146条第1項では、以下のように定められている。
公職選挙法第146条第1項(文書図画の頒布又は掲示につき禁止を免れる行為の制限)
「何人も、選挙運動の期間中は、著述、演芸等の広告その他いかなる名義をもつてするを問わず、第142条又は第143条の禁止を免れる行為として、公職の候補者の氏名若しくはシンボル・マーク、政党その他の政治団体の名称又は公職の候補者を推薦し、支持し若しくは反対する者の名を表示する文書図画を頒布し又は掲示することができない。」
つまり、この条文を読む限り、たとえ「政治活動」という名目であっても、氏名や顔を表示した2連ポスターを掲示していれば公選法違反となる。
しかし、一方で公選法にはこのような条文も存在する。
第201条第14項(選挙運動の期間前に掲示されたポスターの撤去)
各選挙につき、当該選挙の期日の公示又は告示の前に政党その他の政治活動を行う団体がその政治活動のために使用するポスターを掲示した者は、当該ポスターにその氏名又はその氏名が類推されるような事項を記載された者が当該選挙において候補者となつたときは、当該候補者となつた日のうちに、当該選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)において、当該ポスターを撤去しなければならない。
2 都道府県又は市町村の選挙管理委員会は、前項の規定に違反して撤去しないポスターがあると認めるときは、撤去させることができる。この場合において、都道府県又は市町村の選挙管理委員会は、あらかじめ、その旨を当該警察署長に通報するものとする。
この条文を読む限りは、2連ポスターを撤去するのは立候補届が受理された告示日当日で良いということになり、小野崎候補が夕刻までにポスターを撤去したのは適法な対応と評価される余地もある。
違法か?合法か?
同じ公職選挙法でありながら、2連ポスターの扱いは、一方で選挙期間中の掲示は違反(第146条第1項)、もう一方で告示日当日中に撤去すれば合法(第201条第14項)という、異なる解釈が成立する。
しかし、山武ジャーナルでは、ここで一見矛盾した法律の条文について、法律談義を展開するつもりはない。
選挙戦がスタートした今問われるべきは、次期山武市長としての候補者の「資質」である。
公職選挙法は、民主主義の根幹となる選挙の「フェアプレー」のための法律である。
そのフェアプレーのルールに、異なる解釈が存在した時、候補者はどちらの解釈を選択するか──
- 「フェアプレー」の精神で、より厳しい解釈を選択する
- 「自己の利益」を優先し、より自分に都合の良い解釈を選択する
読者、有権者諸兄は、新たに市民代表となる次期山武市長に、どちらの選択をする人物を望むだろうか?
山武ジャーナルではこれまで、小野崎候補が明確に公選法の規定をオーバーした政治活動用看板を長期間設置していた問題、2連ポスターのグレーゾーン度合が極めて高い問題を報じ、小野崎候補のコンプライアンス=法令遵守の姿勢が極めて危ういことを指摘してきた。
選挙戦スタート後の今回の動きは、これまでの指摘が裏付けられたと言えるのではないだろうか。
山武ジャーナルでは、今後も山武市長選挙に関する情報の発信を継続していく。


