
山武ジャーナルは、4月の山武市長選挙に立候補を表明している小野崎正喜県議が、市内に掲示している「2連ポスター」について、公選法上かなりグレーな掲示物であることを指摘しました。
この記事について、読者の方からSNSで以下のようなご指摘を受けました。
こちらについては、合法のポスターだと思われます。政治団体の部分が1/3以上という面積の規定があり、三角の上下の部分+中央の部分の合計が1/3を超えていれば合法ということになります。告知の部分が1/3という表記をしていますが、政治団体やキャッチフレーズ、演説会日程などの部分が1/3であればよく、4%という指摘は誤認であると私は思います。選管に確認をされたらいいと思います。
こちらのご指摘について、検証の上で山武ジャーナルから回答いたします。
このポスターは合法か?

山武ジャーナルでは、2連ポスターについて次のように説明してきました。
2連ポスターはあくまで「政治活動」の体裁であり、公職選挙法に明文化された制度ではない。法律上明確な基準も存在しない。
選挙の公平性を担保するため、公職選挙法では「選挙活動」について厳しく規制している一方、日本国憲法では国民の「政治活動」の自由が保障されています。
「2人の弁士が登壇する演説会の告知」という「政治活動」であり、「選挙活動」ではない――これが、このような2連ポスターを掲示する側の基本的なロジックです。
しかし実際には、演説会の日時に年号がなかったり、極小文字で告知の体をなしていないケースも少なくありません。そのため、こうしたポスターは公選法の規制を回避しつつ、選挙区内に顔と名前のポスターを掲示するための方便となってきました。
「私に投票してください」あるいは「あなたの清き一票を」といった直接的な投票依頼の文言さえ書かなければ、公選法上ただちに違法とはされにくく、いわば「グレー」な掲示物として成立しているのが実情です。
では、公選法上「クロ」でなければ「合法」かと言えば、必ずしもそうではありません。
山武ジャーナルでは、小野崎県議の政治活動用看板のサイズオーバーの問題についても指摘しました。政治活動用事務所の看板については、公選法で足の長さを含め高さ150センチ、幅40センチという明確なサイズ規定があります。
このように法律の条文に明確な規定があるものについては、「違法でなければ合法」と言うことができます。
しかし、「政治活動」のための2連ポスターについては、公選法上の明確な定めがありません。したがって、明らかに投票を促すような表現でなければ、公選法上はひとまず「違法ではない」という状態に置かれているに過ぎません。
つまり、2連ポスターについて問題となるのは、「合法か違法か」という二択だけではなく、公選法の立法趣旨に照らして、その運用が妥当かどうかという点でもあります。
1/3ルールについて
「政治活動」は公選法上ただちに違法ではないと書きましたが、だからといって「政治活動」と言い張れば何でも許されるわけでもありません。
そもそも、公職選挙法の立法趣旨の一つは「選挙の公正」を守ることにあります。選挙活動に期間や掲示物の制限を設けるのは、お金や権力を持つ者ばかりが有利にならないようにするためです。
いくら「これは政治活動だ」と主張しても、実質的に選挙の事前活動とみなされ
るようなポスターを掲示すれば、公選法の趣旨に反するものとして問題となり得ます。
そこで、過去の判例や選挙管理委員会の実務運用などから、「この程度であれば政治活動とみなす」とされるガイドライン的な考え方が存在します。それが、いわゆる「1/3ルール」です。
山武ジャーナルでは、「2人の弁士と演説会の告知部分の面積がそれぞれ1/3ずつ」という理解を示してきました。
今回のご指摘では、演説会告知部分だけではなく、政党名やキャッチフレーズも含めて1/3と考えるべきではないか、とのことでした。そこで実測値をもとに、それぞれの部分の面積を算出しました。

その結果、政党名+キャッチフレーズ+演説会告知の面積の合計は1659.73㎠となり、2人の弁士それぞれの面積1667.90㎠とほぼ同じであることが分かりました。実測時のミリ単位の誤差を考慮すれば、読者の方のご指摘通り、このポスターの面積比は概ね1/3ずつとなっていると言ってよいでしょう。
面積が1/3であれば「合法」なのか
では、面積比が概ね1/3であることが確認できたこのポスターは、「合法」と言えるのでしょうか。
まず前提として、この「1/3ルール」は法律に明文化された基準ではなく、あくまで判例や実務運用から導かれた目安に過ぎません。したがって、この基準を満たしているからといって、ただちに「合法」と評価されるものではありません。最大限好意的に見ても、「違法と断定されにくい可能性がある」という水準にとどまります。
ここで重要なのは、公職選挙法の立法趣旨です。
同法は、選挙前に候補者の顔や名前を過度に露出させることによって不公平が生じるのを防ぐため、事前運動を禁止しています。したがって、「政治活動」として許容されるためには、単に形式を整えるだけではなく、実質的にも政治活動としての機能を備えている必要があります。
今回のポスターについては、面積配分は確かに1/3になっていました。これは偶然ではなく、かなり緻密に設計されたものと見るのが自然です。
そこまで緻密なデザインワークができるのであれば、演説会の告知がもっと遠くからでもわかるようにできたはずです。
しかし、演説会の告知部分は全体の面積のわずか4%と極めて小さく、遠目では判読できないレベルです。また、日時についても年号の記載がなく、告知としての実用性はほぼないと言っても良いでしょう。
つまり、このポスターは
形式上は1/3ルールに寄せながら、実質的な告知機能は極めて弱い構成
になっているということです。
言い換えれば、政治活動として成立するために不可欠な「告知」という要素を形式上は残しつつ、意図的にその機能をほとんど失わせる水準まで削り込み、その分を人物の露出に振っている構成とも言えます。
この点から見れば、本件の問題は単なる「面積」の問題ではありません。
面積は整えている。しかし機能は整えていない。
ここに本質があります。
本件ポスターは、面積配分という形式面では一定の配慮が見られます。その点については、今回のご指摘によってより明確になりました。
しかしそれは、公選法上明確に認められた「合法行為」であることを意味するものではありません。むしろ、「違法と断定されにくいラインをギリギリ攻めた」設計と言えます。
それが、自らが目立つことを優先した結果であれば、その姿勢は、山武ジャーナルが前回の記事で指摘した問題意識と何ら変わりません。
形式を整えることと、法の趣旨に適合することは、必ずしも同義ではありません。
告知としての機能が著しく弱い点を踏まえれば、本件ポスターは「合法」と胸を張って言えるようなものではなく、公職選挙法の立法趣旨に照らしても、事前運動的な効果を強く持つ掲示物と評価されても仕方のない構成であると考えます。
次期山武市長に求められるコンプライアンス意識
山武ジャーナルでは、小野崎県議の違法看板問題、今回の2連ポスターの問題を通じて、一貫して次期山武市長候補としてのコンプライアンス意識について問題提起を行ってきました。
8年間の松下市政下では、コンプライアンスとガバナンス不全を疑わせる事案が複数発生しています。
・小松浜の市有地に公共事業で積み上がった違法残土問題
・担当者一存の随意契約による修繕費未払い問題
・ゴミ焼却場建設にかかる意思決定の迷走
これらは、単に発生した後に対処すればよいという問題ではありません。
次期山武市長に求められるのは、そもそも初めからこのような問題が発生しないよう、地方自治体としての山武市のガバナンスを確立し、法令に基づく市政運営の体制を整えることです。
そのために必要なのは、市長自身が全職員の模範となる高いコンプライアンス意識を持つことに他なりません。
もしトップである市長が「このくらいなら大丈夫」「違法でなければギリギリまで攻めてもよい」という意識の人物であれば、職員に対して「決まりを守れ」と指導することができるのでしょうか。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。 話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。」
これは連合艦隊司令長官・山本五十六元帥の言葉です。
次期山武市長に求められているのは、自らを律し、職員の模範となるような、このようなトップの姿ではないでしょうか。
問われているのは、その背後にある「法と向き合う姿勢」そのものです。
最後に、Googleストリートビューに残っていた、小野崎県議の以前の2連ポスターもご紹介しておきます。

Googleストリートビューより引用