山武市小中学校統廃合計画案を市民が認めてはいけない理由(その2)

許してニャン

教育長がミス認め陳謝 資料事前配布問題で 山武市教委(千葉日報:6月9日 19:14)

山武市教委が今年1月、市立小中学校統廃合計画案の要旨をまとめた資料を定例会の議決前に市民に配布していた問題で、嘉瀬尚男教育長は9日の市議会一般質問で、「事務手続き上の手違いだった。おわびする」と陳謝した。八角公二議員の質問に答えた。

 

山武市教育委員会が、法的に定められた唯一の意思決定機関である「教育委員会会議」での議決を経ず、山武市内全戸に小中学校統廃合計画案のカラーリーフレットを配布していた問題は、これまで山武ジャーナルだけでなく千葉日報でも指摘されていたが、平成28年6月9日の山武市議会本会議において八角公二議員の一般質問に際し、嘉瀬尚男教育長はこの問題に対して初めて陳謝した。

しかし、この問題は「単なる手続き上の手違い」などではないことはこれまで述べてきた通りである。

ここではさらにそのことを裏付ける根拠を示す。

 

一般企業で宣伝チラシなどを製作する場合、担当者は「どの位の枚数を作るのか」「効果はどうなのか」「費用はどの位かかるのか」「製作日数はどの位か」などの情報をまとめ、会社に対して「この仕事をしてよいか?」諮る必要がある。そのための書類が「稟議書」だ。

地方公共団体において「稟議書」にあたる書類は「起案書」と呼ばれている。

山武ジャーナルでは市の公文書開示制度に則って、この書類を合法的に入手した。

公開するに当たり、山武ジャーナルとしては印刷業者の代表者個人名と、教育委員会職員のうち管理職でない者の氏名・印影については赤く塗りつぶした。黒く塗りつぶされている部分は教育委員会が公表しなかった部分である。

山武市小中学校規模適正化・適正配置計画(案)カラーリーフレット作成に掛かる起案書一式

 

まず初めに、これがいかに深刻かつ許容しがたい問題であることを説明したい。

計画案起案書(修正後)_ページ_01

この「支払命令書」という書類にある2つの日付に注目してほしい。

「負担行為日:平成27年12月24日」とあるが、これは教育委員会がこのリーフレット印刷を正式に業者に発注した日付である。

山武市教育委員会がこの計画案を議決したのは平成28年1月20日であるため、この書類は教育委員会が議決前の根拠の無い計画案のリーフレットを業者に発注していたことを証明している。

さらに、「命令日:平成28年1月18日」とあり、これも議決2日前の日付となっている。

つまり、山武市教育委員会は議決前の根拠の無い計画案のリーフレットを印刷し、山武市は代金として公金まで支出していたことになる。

嘉瀬教育長はこのことを「事務手続き上の手違い」と釈明しているが、この起案書を読み解くとそれが事務方によって周到に、確信的に進められており、断じて「手違い」などでないのは明白だ。

起案書と会議録から読み解く、計画案リーフレット作製と計画案議決までの流れ

平成27年
11月
25日
「基本方針」を成案として議決 教育委員会会議 この時点で正式に決定したのは、統廃合の「組合わせ」だけで、具体的な時期や統合後の学校の位置=どの学校を閉校にするかなどは一切示されていない。
平成27年
12月
11日
「計画案」を議会で説明 市議会全員協議会  議会に対して議決した「基本方針」ではなく、教育委員会会議で一度も協議されていない「計画案」が議会で示される。

*この時点ではまったく根拠の無い「計画案」を、これがあたかもそれまで時間をかけて市民の理解を得ながら策定されたものであるかの様に示したのは、議会を欺き「計画案」を既成事実化しようとした意図があったのか?

平成27年
12月
15日
「計画案」リーフレット作製見積依頼 教育総務課 「計画案」カラーリーフレット作製の見積依頼を許可

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*この際、納品日は「平成27年1月10日」と設定されている。

平成27年
12月
16日
 「計画案」が初めて協議される 教育委員会会議  本来公開される教育委員会会議において、「秘密会」によって協議された。
平成27年
12月
21日
「計画案」協議 総合教育会議 市長が議長を務める教育総合会議で、「計画案」カラーリーフレット作製の方針が示される。

*「総合教育会議」は調整の場であり議決機関ではない。結果については「尊重しなければならない」とあるが、教育委員会としての機関決定は唯一の意思決定機関である「教育委員会会議」で行う必要がある。

平成27年
12月
22日
リーフレット作製依頼 教育総務課 2社の見積のうち低い価格の業者に発注。契約日は平成27年12月24日
平成28年
1月
14日
リーフレット納品 教育総務課 「計画案」リーフレット25,000部納品・検収
平成28年
1月
15日
リーフレット学校に配布 教育総務課 「計画案」リーフレットを、学校を通じて保護者に配布
平成28年
1月
18日
リーフレット区長に配布 教育総務課 「計画案」リーフレットを、区長を通じて回覧で市内全戸配布
平成28年
1月
18日
製作費支出命令 教育総務課 「計画案」リーフレット製作費の支払いを指示
平成28年
1月
20日
「計画案」議決 教育委員会会議 「計画案」が議決される。

*「計画案」が教育委員会会議で審議されたのはわずか2回。そのうちの1回は「秘密会」だったため、市民がこの「計画案」を知りうることが出来たのはこの時が最初だったにも関わらず、「計画案」はこの時に議決されている。

教育委員会唯一の意思決定機関である教育委員会会議

この問題が単なる「手違い」ではないのは

・「計画案」が初めて教育委員会会議で協議される前日に、見積依頼の起案が起こされている。

・「計画案」議決1ヶ月前に作製契約・作成依頼

この2点だけ見ても明らかである。

さらに、「計画案」リーフレット作製が具体的に動き出したのは、平成27年12月21日の「総合教育会議」の後からであることが確認できる。

「総合教育会議」とは平成27年4月に施行された「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律」(以下「新法」)に基づいて設置されたもので、文科省は

総合教育会議は、首長と教育委員会が教育行政の大綱や重点的に講ずべき施策等について協議・調整を 行う場であり、両者が教育政策の方向性を共有し、一致して執行にあたることが期待されています。

なお、会議において調整がついた事項については、それぞれその結果を尊重して事務を執行することとなり ます。

と説明している。

教育委員会は地方公共団体に設置されてはいるが、法的な位置づけは地方公共団体から一定の独立を保つ独立した行政委員会で、その意思決定は教育委員の合議に基づくものであり、「総合教育会議」の結果は尊重するものとしても、あくまで「教育委員会会議」での議決をもってその意思決定を行わなければならない。

それが山武市においては、椎名市長が議長を務める「総合教育会議」での協議事項を、そのまま教育委員会の決定事項として事務方が執行するという図式がここに浮き彫りとなった。

つまり、現在の山武市教育委員会は、市長が招集する「総合教育会議」の単なる追認機関に成り下がっており、完全に形骸化しているといえるのではないだろうか。

 

平成28年6月9日の山武市議会本会議において、議決前に「計画案」のリーフレットを作製して全戸配布してしまうという行政機関の事務として致命的な瑕疵について、椎名千収市長、中野伸二副市長、嘉瀬尚男教育長はそろって

「大きな問題として認識していない」

という見解を示した。

これが大きな問題でないとすれば、山武市という地方公共団体の法治はすでに崩壊していると断ぜざるを得ない。

山武ジャーナルが議会に提出した「嘉瀬教育長再任の同意人事に慎重審議を求める陳情」の主旨は、正にこの1点を問うものだった。

しかし、残念ながら山武市議会は16対5で嘉瀬教育長の再任に同意した。しかも、公明党の長谷部龍作議員に至っては賛成討論まで行って嘉瀬教育長の再任を支持した。

教育委員会、市長、議会がこのような状況で進められる小中学校の統廃合計画を、私たち市民は本当に受け入れていかねばならないのだろうか。

山武ジャーナルでは今後も更にこの問題を掘り下げていく。

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