「嘉瀬尚男教育長の再任には慎重審議を」山武市議会に陳情書提出

「嘉瀬尚男教育長の再任には慎重審議を」山武市議会に陳情書提出

議会に陳情書提出

 

山武ジャーナルは平成28年5月16日、山武市議会議長あてに「教育長同意人事に慎重審議を求める陳情書」を提出し、同議会事務局に受理された。

嘉瀬教育長の任期は平成28年6月23日までとなっているため、6月議会において椎名市長から嘉瀬教育長再任の同意人事が上程されることが決まっている。

教育委員会について定めた法律「地方教育行政の組織及び運営に関する法律(地教行法)」は昨年改正されており、新法において教育委員長は廃止され、教育長の権限はより強化されるものとなっている。

それに伴い、これまでは教育長は教育委員の中から互選で選出されていたのが、市長が任命し議会の同意を得るものとなった。

前回の記事で指摘した通り、山武市教育委員会は議決前の計画案のカラーパンフレットを市内全戸に配布するという行政機関の手続きとして致命的な誤りを犯している。

教育委員会の全ての業務をつかさどるのは教育長であり、嘉瀬教育長にはこの問題に対して重大な責任があるのは明白だ。

 

通常、このような市長の任命人事について、議会ではほとんど審議されることなく可決されていくという。

しかし、山武市教育委員会については、昨年一人の委員が過去に起こした異性問題が明るみとなり任期を全うせず辞任したのを初め、今関委員の告示読み間違え問題、そして嘉瀬教育長の波動水問題など、市民からも続々と不信の声が上がっている。

教育委員の任命権者は市長であるが、椎名市長が任命した教育委員にこれだけ問題があるということは、同意人事といえども議会にはチェック機関としてしっかりとその役割を果たしていただく必要があるのではないだろうか。

 

今回の陳情は、ルール破りをした教育委員会の責任者たる嘉瀬教育長の是非を議会で問うことを求めるのが主旨である。

したがって、この判断は議員それぞれの政治的な思想、信条、あるいは政策などは一切関係なく、ただただ「ルール違反」の是非を判断して頂くだけでよいと考える。

そして、その判断は「ルール違反」を是として嘉瀬教育長再任を認めれば、それは民主主義の否定にも繋がるのである。

山武市議会議員各位におかれては、是非最大限の良心を発揮していただき、山武市において民主主義が死んでいないということを市民の前に示していただきたいと心からお願いする。

以下に陳情書の全文を公開する。


教育長同意人事に慎重審議を求める陳情書

平成28年5月16日

山武市議会議長 宍倉 弘康 様
山武市議会議員 各位

陳情者 山武ジャーナル

(陳情の要旨)
嘉瀬尚男教育長再任(改正地教行法に基づく新教育長任命)の同意人事につき、十分かつ慎重な審議を求めます。

(陳情の理由)
山武市教育委員会よって策定された「山武市立小中学校の規模適正化・適正配置基本計画(案)」(以下「計画(案)」とします)は、平成27年12月16日開催の教育委員会平成27年第12回定例会で秘密会によって協議され(添付資料1)、平成28年1月20日開催の教育委員会平成28年第1回定例会において議決されました(添付資料2)。
ところが、添付資料2の平成28年第1回定例会会議録によれば、平成27年第12回定例会における協議内容に基づく修正内容を反映した計画(案)のカラーパンフレット(添付資料3)を、平成28年1月15日に各学校を通じて父兄に、18日に回覧で市内全戸に配布したことを小川教育総務課長が説明しています。(添付資料2・8ページ)
計画(案)の議決が1月20日、パンフレットの配布が1月15日、18日であれば、教育委員会は議決前の計画(案)のカラーパンフレットを作製して全戸配布したことになりますが、これは行政機関の手続きとして極めて重大かつ深刻な瑕疵といえます。
教育委員会の唯一の意思決定機関は教育委員会会議です。この計画(案)は教育委員会会議の議決をもって初めて教育委員会の計画(案)となり得ますが、議決前の計画(案)は何ら根拠の無い私案の状態です。これを山武市教育委員会名でパンフレットにして市内全戸に配布したとなれば、議決前の根拠の無い私案を、あたかも教育委員会が機関決定した正式な計画(案)であるかのように市民を欺いたことになります。

教育長の身分、職務などを定める地方教育行政の組織及び運営に関する法律は平成27年7月に改正されていますが、現在の嘉瀬教育長は改正前の旧法に基づいて任命された教育長であるため、これらの定めは経過措置について定めた同法附則(平成26年6月20日法律第76号)第2条により旧法によるものと解することが出来ます。
旧法における教育長の職務は「教育委員会の指揮監督の下に、教育委員会の権限に属する全ての事務をつかさどる。」(地教行法旧法第17条)とされていることから、議決前の計画(案)のパンフレットを作製して全戸配布するという極めて不適切な事務の責任の所在が嘉瀬教育長にあることに疑いありません。

議決前の計画(案)のカラーパンフレットを教育委員会名で作製して全戸配布できる職権は嘉瀬教育長以外にないと考えられますが、これを過失によって行ったとしても重過失であり、この一事をもっても「人格が高潔で、教育行政に関し識見を有するもの」(地教行法第4条)という教育長の要件を満たしていないことは明白です。確信的に行ったとすればあらゆる行政行為の根幹である法例に基づく民主主義の統治原則を蔑ろにするものであり、教育長はおろか行政機関の職員としての資質を決定的に欠いているといわざるをえません。

仮にパンフレットの製作と配布が特定職員の独断で行われていたとしても、「教育委員会の権限に属するすべての業務をつかさどる」(地教行法旧法第17条)とされる嘉瀬教育長の責任を回避できるものではありませんが、そのような状況にあったとしても「教育長は、教育委員会の全ての会議に出席し、議事について助言する。」(地教行法旧法第17条の2)とされており、平成28年第1回定例会(添付資料1)において小川教育総務課長が計画(案)のパンフレットを配布したと説明した際、この不適切な事務について指摘することなく議事を進行させたことは、嘉瀬教育長が教育長としての職務を遂行する能力を欠く証左となります。

また、これらの事実を山武市教育委員会教育総務課に指摘したところ、「学校には15日に渡したが20日以降に配布するよう指示していた。」区長に対しては「20日に発送スケジュールを組んであり、取りに来た区長に対してだけ18日に配布した。」との釈明がありました。ただし、学校や18日に渡した区長に対して20日以降に配布する旨の「指示書」の様なものは存在しないとのことでした。
仮にこれが事実であったとすれば、議事の中でその説明はありませんでしたので、すでにパンフレットの全戸配布が完了し、原案の修正や否決が不可能であるという既成事実を示すことで、事務方が議決を誘導したともとれる民主主義国家に属する地方行政組織としては絶対に容認出来ない議会運営を行っていたことを認めるものとなります。

何れにしても嘉瀬尚男教育長が教育長たる資質を著しく欠いているのは明らかです。山武市議会議長はじめ山武市議会議員各位におかれましては、これらの事実に基づき嘉瀬尚男教育長の同意人事につきまして十分かつ慎重に審議し、適切な議決を行うことをお願い申し上げます。