【スクープ】山武市広報誌配布業者、残紙大量処理現場【折込まれるはずの広報誌の行方は?】

【スクープ】山武市広報誌配布業者、残紙大量処理現場【折込まれるはずの広報誌の行方は?】

配達されず、闇から闇に葬られる新聞残紙。ここに折込まれてれ届けられるはずのチラシや広報誌の行方は?

新聞残紙とは?

これは平成31年2月8日に、成東の読売新聞販売店「(有)齋藤ニュースサービス」で撮影された古紙の処理現場である。幌のついた大宮ナンバーの古紙回収車に、大量の新聞紙と、恐らく紙で出来た「何か」が厳重にダンボールに梱包されて積み込まれている。

積み込まれている梱包された新聞紙の「背」の部分が揃っていることから、これらは全て同じ日の新聞であることがわかる。

一旦配達された後に一般家庭から回収された古新聞であれば、この様に同じ新聞が揃うことはありえない。

つまり、これは新聞社から新聞販売店に納品された新聞が、配達されずにそのまま古紙として処理される「残紙」だ。

新聞の収益は、大きく分けると講読料と広告料である。広告料の単価は、発行部数が多いほど高く設定できるため、一部の新聞社は、販売店に実際の契約部数以上の新聞を押し付け、発行部数を水増ししているという指摘がある。新聞販売店は余分な仕入れが発生する一方、折込広告収入や、新聞社からの報奨金などで利益を確保する。このように、新聞販売店が新聞社から押し付けられた過剰な仕入れ分の新聞が、「押し紙」と呼ばれている。

また、新聞販売店が折込広告料水増しや営業目標達成のため、自ら契約件数以上の部数を新聞社から仕入れる場合もあり、これが「積み紙」と呼ばれている。

これらに汚損・破損等に備える予備紙を加え、実際には配達されず、毎日古紙として処分されている新聞が「残紙」と呼ばれている。

新聞残紙がなぜいけないのか?

誰の目にも触れず、毎日処分され続ける残紙は、環境に負荷をかけているという問題だけではない。

新聞本紙に広告出稿している企業は、配達されない残紙分の広告費を不当に支出させられていることになる。

また、新聞販売店に折込広告を依頼している企業は、配達されないチラシの折込料金を支出させられるだけでなく、裏で処分されるだけのチラシの印刷費用も負担させられていることになる。

広告費は最終的に商品やサービスの価格に転嫁されるため、一般読者や非購読の一般市民にとっても決して無関係ではない。

また、広告を出稿するのは企業だけではない。新聞本紙には「政府公報」などの「公告」も出稿さてれる。そして、山武市も「広報さんむ」を年12回、「議会だより」を年4回、新聞折込で配布している。折込料金は、市内に配布エリアを持つ山武市新聞折込組合に支払っており、その原資はいうまでもなく税金である。

広報さんむの新聞折込配布率は、山武市世帯数の85.5%?

(一社)日本新聞協会によると、平成30年のスポーツ紙を除く新聞世帯購読件数は36,823,021件。世帯56,613,999件で割ると、全国の新聞世帯購読率は65.0%となる。

それに対し、山武市市民自治支援課による平成30年4月の広報折込数は19,015件。当時の山武市の世帯数22,238件で割ると、山武市の広報誌折込世帯配布率は85.5%となり、これが真実なら全国の新聞購読率を20.5%上回る高水準となる。

山武市は、読売、朝日、毎日、産経、日経、千葉日報、東京の各一般紙の折込で、広報さんむと議会だよりを配布している。毎月の折込数は、山武市新聞折込組合の代表である(有)齋藤ニュースサービスが取りまとめ、担当部署の市民自治支援課に申告しているが、同社の残紙処理現場が明るみとなったことで、折込組合が毎月山武市に申告している広報の折込部数の信頼性は、著しく損なわれた。

そこで、仮に山武市の新聞世帯購読率が全国平均並みとした場合、山武市が被っていると考えられる損害の試算は以下の通りとなる。

平成30年4月の広報さんむ

・山武市世帯数:22,238世帯

・印刷部数:22,000部

・印刷費用:5,844,960円(年間)

・一部あたり印刷費用:5,844,960円÷(12ヶ月✕22,000部)≒22.14円

・新聞折込部数:19,015部(世帯数の85.5%)

・折込費用:379,919円(1部あたり19.98円)

折込組合の代表である(有)齋藤ニュースサービスでの残紙処理が明るみとなったことから、山武市の世帯購読率が全国平均並みだとしたとき、配達されない残紙によって山武市に発生する損害の試算が以下の通りである。

残紙による山武市の損害額試算

・山武市広報折込世帯配賦率:85.5%

・全国一般紙世帯購読率:65%

・全国平均から想定した山武市の新聞購読部数:14,455部(22,238✕0.65)

・残紙である可能性のある部数:19,015ー14,455=4,560部

・損害額:4,560部✕(印刷単価22.14円+折込費単価19.98円)≒192,067円

・年間損害額試算:192,067円✕(広報さんむ年12回+議会だより年4回)=3,073,072円

これが正しいとすれば、折込1回あたり約19万円、議会だよりを含めると、年間で約307万円もの損害が山武市に発生している可能性がある。このうち約半分が配達されずに廃棄される部数分の印刷費用、そして残り半分が折込組合の不当利得である。

山武市広報折込の特殊な契約形態

広告主が新聞折込広告を依頼するのは、販売店に直接持ち込む場合を除き、多くは広告代理店である。

広告主は広告代理店と契約し、広告料は広告代理店に支払う。広告代理店は広告主から預かった折込チラシを配送センターに納品し、配送センターから各販売店に配送される。

しかし山武市では、齋藤ニュースサービスが代表となり、市内に配布エリアを持つ新聞販売店が「山武市新聞折込組合」を組織し、広報誌、議会だよりなどの市広報誌の配布業務を市と直接契約している。

毎月の折込部数は、齋藤ニュースサービスが担当部署の市民自治支援課に報告し、その部数が齋藤ニュースサービスに納品され、各販売店に配布される特殊な形態となっている。

この様な契約形態であれば、本来広告代理店で発生する中間マージン分の折込料金も、全て販売店の収益とすることが出来る。

また、広告代理店であれば、新聞・雑誌の実売部数を調査する第三者機関である(一社)ABC協会のデータを元に折込部数を提示するが、この様な契約形態であれば、部数は販売店の「言い値」を提示することも可能であると考えられる。

山武ジャーナルは1年以上前から指摘

山武市新聞折込組合が提示する折込部数が極めて疑わしいことから、小筆は昨年5月に山武市に対して折込部数の精査と、適切な配布方法などについて、質問書を提出した。しかしながら、担当部署は折込組合からの回答をそのまま伝えるのみで、精査することはなかった。

ところがこの指摘以降、折込組合は徐々に申告部数を減らし、本年2月には1,180部減の17,835部となった。それでも折込世帯配布率は依然として80%の高水準であることに変わりはない。

同じ条件で1,200部の差異

小紙は同時期に春号の配布を行ったが、この際に折込組合に加盟している新聞販売店全13店に直接持ち込み、「山武市全部に入る部数を」と依頼し、販売店が提示した部数をそのまま渡した。

この時の合計部数は、折込組合が山武市に提示していた部数より1,200部少ない、16,635部だった。

店舗別に見ると、小紙に提示した部数より広報の折込部数の方が多かった店舗が7店で計1,750部。逆に小紙に提示した部数の方が多かった店舗が2店で計550部だった。

中でも広報の方が多かったうちの2店舗は、広報の折込部数が、店頭に表示している部数を上回っていた。事情を聞くと、1店は「広報なので、普段チラシを入れない農業新聞や、こども新聞などにも入れるため」と回答し、もう1店は「その(折込組合の)部数はよくわからない。当店の部数は店頭に掲示している部数だけ」と回答した。

また、「山武市内には配達していない」という店舗が1店あった。

齋藤ニュースサービス代表者長男が、山武市議に初当選

配達されない大量の新聞残紙の処理現場が確認されただけでなく、折込組合の運営についても極めて疑問の多い齋藤ニュースサービス代表者の長男、齋藤昌秀氏(34歳)が、山武市議に初当選した。同氏は後援会だよりなどで、家業の新聞販売店での業務経験に言及しており、同社の内部事情を知り得る立場にあると考えられる。

実配達数以上の折込部数を申告し、山武市を欺いて不当な請求を続けていた事実が確認されれば、同氏の進退問題に発展するのは必至。齋藤市議には、公人として市と市民に対して説明責任を果たす義務があるだろう。

参考サイト

押し紙の実態|MEDIA KOKUSYO

参考文献

配達されない「残紙」が「新品古新聞」として流通している例