【編集長コラム】行政は革新勢力どう向き合うべきか?

【編集長コラム】行政は革新勢力どう向き合うべきか?

山武市において、前市長時代に革新勢力を積極的に行政に関与させようとしていた形跡があることを、以前の記事で指摘した。【院政か?】椎名前市長の有料講演会に、現職市職員8名が合唱で参加(平成30年8月18日)

政治信条を「保守」と「革新」とに分けた時、それぞれどちらが善でどちらが悪という問題ではない。思想・信条の自由は憲法で保証されるものであって、市長が「革新」であることも、市民がそれを良としなければ当選していないのだから、それ自体は問題ではない。

しかしながら、政治的目的を達成するために非合法の手段を用いるとなれば話は変わり、保守であろうと革新であろうと暴力行為やましてや人殺しなど到底許されるものではない。

現在、日本の公党で公安調査庁の監視対象団体となっているのが、革新政党の一つ「日本共産党」である。

共産主義世界革命を目的としてソ連が創設した共産主義インターナショナル=コミンテルン日本支部だった日本共産党は、共産主義革命のためにはテロ行為を厭わないという「暴力革命」を肯定し、戦前戦後多くのテロを実行し、内部の粛清で何度も殺人事件を起こしている。現在でも警察権力が実力で取り締まりを行うような場合には暴力的手段も辞さないという、いわゆる「敵の出方論」を支持し、暴力革命という考え方を完全に捨て切った訳ではない。

そのため、公安調査庁は旧オウム真理教の流れをくむアレフや光の輪と同様、「破壊活動防止法」に基づいて「テロ活動を実行するかもしれない団体」と位置づけて調査を継続している。

これが何を意味しているか分かりやすいように宗教団体のアレフで例えると、宗教の自由があるのでアレフの信者になったり、アレフの道場で修行したりしても逮捕されるようなことはないが、公安調査庁としては「アレフはかつてのオウム真理教の様にいつテロ活動を始めるかわからないので、道場に出入りしている信者の身元や動向は平素からしっかり把握しておかなければならない」ということである。

日本共産党も調査対象ということは同じなので、党員の自宅など地元警察は把握しているだろうし、集会やデモ行進に参加すれば知らないうち写真を撮られ、身元調査をされてファイルされるかも知れない。警察なら自動車のナンバーから所有者を特定することなど簡単だ。

小筆が指摘するまでもなくこのようなことは常識の範囲で、関わりたくない大多数の人は共産党の集会などに初めから参加しない。

ところが、少し注意が必要なのは日本共産党という名前ではないが明らかな関連団体が無数に存在しているところだろう。全労連、自治労連、全教(教員の労組)などの労組、商工団体の民商、学生団体の民青、婦人団体の新日本婦人の会などが代表的なものであろう。

そのような日本共産党系の団体に「原水爆禁止日本協議会=原水協」という団体がある。核兵器を持たない日本で原水爆禁止を訴えながら、「ソ連の核兵器はアメリカ帝国主義に対抗する良い核兵器」という見解を示した、完全に偏ったイデオロギーを持つ団体である。

山武市では例年この団体の「原水爆禁止国民大行進」に、市長交際費、教育長交際費、議長交際費から賛助金を拠出している。

山武市市長交際費(平成29年7月)山武市ホームページより引用

ただ、賛助金の拠出は山武市だけの問題ではなく、県内でも相当数の自治体が賛助金を拠出している。なぜ多くの自治体がこの様な偏ったイデオロギーをもつ政治団体に賛助金を出しているのかは分からないが、拠出を断わってデモ隊から市庁舎を取り囲まれて示威行為などの嫌がらせを受けることを懸念しているのだろうか。

椎名前市長時代には、デモ隊が山武市役所に到着すると市長自ら出迎えて挨拶をしていたことが確認できる。賛助金の拠出は無用な混乱を回避するための、ある種の「みかじめ料」的なものと理解することも出来ないことはないが、これでは山武市長がデモ隊に錦の御旗を授けたも同然である。

デモ隊を出迎えて挨拶する椎名前市長(千葉土建ホームページより引用)

繰り返しとなるが、ここで問題としたいのは、明らかに偏っているとしても彼らの政治信条そのものではない。彼らがテロリスト予備軍として公安調査庁が監視対象としている団体である点である。

核兵器が地球上から根絶されることは、恐らくは世界の殆どの人々の共通の願いであると思われるが、現職市長がお墨付きを与えたことで何も知らない市民が彼らに同調してデモ行進に参加してしまう様な事になった場合、それによってその市民が受ける有形無形の不利益について、行政は一体どう責任をとれるのだろうか。

例えば、これから就職活動を控えた学生がただ一途に平和を願ってこの様なデモ行進に参加し、記念写真を撮ってSNSにアップし、共産党系の組合旗を持った高齢者たちと一緒に写っているその写真を企業の人事担当者が見たらどんな判断を下すかはわかりきっている。それに、警察官や幹部自衛官を目指す学生にとっては、本人があずかり知らないことであっても、親が共産党活動をしていることで道を絶たれてしまうこともありうる。

原水協に限らず、行政が日本共産党系政治団体・市民団体に「後援」「協賛」などの「お墨付き」を与えることは、本来あってはならないことではないだろうか。ましてや賛助金を拠出するなど言わずもがなである。また、それと知らずに後援、協賛した場合、事後であっても取り消してその旨を広報やホームページなどで告知するような仕組みも必要ではないだろうか。

椎名前市長が退任し、松下新市長誕生で改善を期待したいところであったが、残念ながら松下市長も彼らデモ隊の横断幕を持ちながら記念写真に収まっていた。

原水協デモ隊と記念撮影をする松下山武市長(千葉土建ホームページより引用)

一市民として、市長が公安調査庁監視対象団体とにこやかに記念写真に写る姿は直視に耐えない。

ただ、就任一年目の松下市長にとって、これは前市長からの引き継ぎ事項なのかも知れない。あるいは単にこれまでの前例を踏襲しただけなのかも知れない。いずれにしてもこの一事をもって現時点で松下市長に批判的な評価を下すのは早計であろう。

松下市長におかれては、山武市としてこの様な団体と今後どの様に向き合っていくのか、十分に考慮していただくことを期待するものである。

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