山武ジャーナル

【オピニオン】「市民協働:自治基本条例」の落とし穴

自民党自治基本条例

山武市・蓮沼むらづくり協議会設立準備委員会主催による、市民協働による地域づくり講演会「実践から学ぶ!!地域づくりへのヒント〜市民協働への扉をひらく地域まちづくり協議会〜」が、平成27年1月28日山武市蓮沼スポーツプラザで開催された。講師は関谷昇千葉大学准教授。蓮沼地域だけでなく、市内全域から100名を超える市民が参加し・・・・という記事を書くために当日取材に行ったのだが、講演の内容に明らかな問題点を発見することとなった。

実践から学ぶ!!地域づくりへのヒント〜市民協働への扉をひらく地域まちづくり協議会〜

ここで山武ジャーナルとして関谷昇氏と市民協働=自治基本条例について問題提起をしておきたい。

講演の要旨は

1.まず「地方都市消滅」というショッキングな話題で、市民の危機感を煽る。

2.次に、人口減で自治体サービスの向上が見込めない中、市民と自治体とNPO法人(何故かNPOを押し込んでくる)が「協働」して地域づくりを行う必要があると説く。

3.市民が興味をもつような市民協働による地域づくり事業の実例を幾つか紹介し、市民の関心を高める。

4.そして最後に、市民協働のために自治基本条例の策定が必要であると結ぶ。

というものだった。

確かに話としてはよく出来ている。

ところが、小筆がたまたま「3」で紹介された事例のなかで、クラウドファンディングの手法で資金を集め、空き家を活用した高齢者の居場所づくりという事業に興味を持ち、手元のスマートフォンで調べてみると、驚いたことにその事業はすでに頓挫していたことが分かった。

質疑応答の際に、

「なぜ失敗した事例をあたかも成功例のように紹介するのか?」

と質問したところ

「『失敗することもある』ということを言いたかった」

と、とても国立大学の准教授の口から出たとは思えない詭弁的な回答に絶句することとなった。

小筆が指摘していなければ失敗例だったことは分からなかったので、これは完全に詐欺的な騙しの話法である。

また、このような騙しが少なくとも一つあれば、他の話も真偽の程をその都度検証しなければならなくなるので、結論としてこのような話をする人物は信用するべきではないということになる。当然このような人物を市民の税金で招いて講演させることも大きな問題である。

「市民協働」を謳う「自治基本条例(まちづくり条例)」は何故危険なのか?

平成27年9月に、茂原市において「まちづくり条例」が可決された。

茂原市が作製したチラシを元に、この条例の問題を整理してみたい。

まず初めに違和感をおぼえるのが、「市民等」という表記ではないだろうか。

自治基本条例(まちづくり条例)では、その自治体に住民登録のある「市民」の他に、市外からの通勤・通学者、会社や各種団体のとその構成員なども「市民」を同じ権利を認め、その「市民等」をまちづくりの主体とし、住民投票の権利まで認めている。

「市民等」「市」「議会」が連携して協働などとあるが、そもそも「市民等」が総体として同じ利害を持っているということがありえない。

市民の中には自営業者も給与所得者も、富裕層も貧困層も、大人も子供も、右翼も左翼も、様々な異なる利害関係と思想を持った人がいる。だから一人一票で選挙をして、多数決で選んだ代表者を選出する。それが民主主義の原則である。様々に異なる市民の利害を、多数決の原理で調整するのが議会の大きな役割の一つである。

ところが、住民投票で市民を直接行政に参加させてしまえば、議会による調整機能が無効化されてしまう危険がある。なぜなら、そこに積極的に参加できる市民は時間的、経済的余裕のある人に限られるからである。

さらに「市民等」には必ずしもその自治体での住民登録は必要とされておらず、特定の政治的思想を持った政党、団体などが、資金力を背景として組織的に集中的に活動家を配置することも可能である。

例えば、成田空港反対運動の様に、外部から大挙して特定の思想を持った活動家が押し寄せるような事態となった場合、その自治体に「自治基本条例(まちづくり条例)」が制定されていれば、そのような活動家にも「市民等」として自治体の意思決定に関わる住民投票の権利が認められてしまう。

さらに、この「市民等」には外国人も含まれ、外国人に住民投票権を認める「自治基本条例(まちづくり条例)」そのものが、選挙権が国民固有の権利と定めた日本国憲法に反するとの指摘が年を追うごとに根強くなっている。

山武市の自治基本条例策定は凍結

当初は自治基本条例策定を目指していた山武市だが、議会の賛同を得られる見込みがなく、その議論は凍結された状態となっている。

しかし、一方で山武市は「地域まちづくり協議会」の発足を推進しており、平成28年に公募した「地域まちづくり支援員」では、日本語、英語、シンハラ語の語学スキルが応募条件となっている。

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地域のまちづくり支援に外国語のスキルを求めることからも、山武市が推進する「まちづくり」には自治基本条例の考え方と同様、地域のまちづくりに外国人の参加を促進する意図があるのではないだろうか。

それに加え、「市民協働」活動で何故かNPO法人の参加が促されている。

外国人や政治活動の隠れ蓑としてのNPOの行政参加を推進するのは、自治基本条例と同根の考え方である。

市内各地でまちづくり協議会、あるいはその発足に尽力されている住民の方々におかれては、あとあと当初イメージしてたものと違ったものになってしまったということにならないようご注意いただき、本当の意味で地域住民のためのまちづくり協議会となる様心から祈念したい。

参考資料:自民党政策パンフレット「チョット待て!!”自治基本条例”~つくるべきかどうか、もう一度考えよう~

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