山武市商工会は12月3日に開催したイベント「さんぶの森ウィンターフェスタ2022」の告知チラシと告知ポスターで、現職市長と現職市議3名の事業所を無償でPRした。告知チラシは山武市内に新聞折込で17,000枚配布され、告知ポスターは商工会会員の事業所を中心に市内広範囲で掲示された。
商工会とは国や都道府県の小規模企業施策を実施する非営利な公的団体で、特定個人や法人の利益のための活動を行なうことや、特定政党のために利用することは、商工会の原則を定めた商工会法第六条によって禁止されており、山武市商工会の在り方やコンプライアンス体制について問題が指摘されている。
無償でPRを実施した事業所と公職者は次の通り(チラシ掲載順)
事業所名 | 公職者名(現職) | 商工会役職 |
桜田オートサービス | 桜田基介(山武市議会議員) | 理事(成東地区) |
リカーランド・カトウ | 加藤忠勝(山武市議会議員) | 理事(松尾地区) |
有限会社小川荘 | 小川一馬(山武市議会議員) | 副会長(蓮沼地区) |
松下食堂 | 松下浩明(山武市長) |
配布されたチラシ |
山武市商工会役員一覧(さんむ市商工会だより第45号より) |
山武市商工会によると、「全会員に商工会だよりを送付した際、1口五千円の協賛金のお願いを同封し、申し込みのあった事業所を掲載した。掲載位置は口数で決めており、桜田オートサービス、リカーランド・カトウ、有限会社小川荘はそれぞれ2口、松下食堂は1口。新聞折込配布後に事務局が『現職市議の事業所からの寄附は問題があるかもしれない』と考え県選挙管理員会に確認したところ、公職者・立候補予定者による寄附を禁じる公職選挙法に抵触する恐れがあるとのことで、事務局の判断で返金した」とのこと。
公職選挙法では選挙の有無に関わらず、公職者、候補者、立候補予定者による選挙区内での寄付行為は、名義のいかんを関わらず自身が出席する結婚式・葬式などを除いて禁止されている。
今回の事案については公職者の苗字を冠した事業所名による協賛金拠出=寄附行為が公職選挙法違反の可能性が高いことは明白だが、もしこれが実際に公職選挙法と判断された時に違法行為を問われるのは4名の公職者の方で、会員に一律に協賛金の募集を行い、任意の申し出によって協賛金を受けた商工会側は単に善意の第三者でしかないはずだ。
しかし、すでに新聞折込で市内全域にチラシを配布した後でその4名だけに返金したとなれば、他の事業者に対しては協賛金の拠出と引き換えに実施したPRを、特定の事業者だけ無償で行なったことになる。この時点で公選法違反については善意の第三者でしかなかった山武市商工会は、商工会法違反行為の当事者になったと考えられる。
今回山武市商工会が抵触したと考えられる商工会法第六条は以下の通り。
(原則)第六条 商工会は、営利を目的としてはならない。2 商工会は、特定の個人又は法人その他の団体の利益を目的として、その事業を行なつてはならない。3 商工会は、これを特定の政党のために利用してはならない。
この点について、山武市商工会の指導を行う立場である千葉県商工会連合会に問い合わせたところ、山武市商工会への事実確認後「指摘の内容に間違いなく、口頭で指導を行った」との回答を得た。また、返金の判断を事務局で行なったことにも問題があるとの見解を示した。
山武市商工会の根深い問題
今回山武市商工会が無償でPRした事業所のうち現職議員が関わるものについて、それぞれの議員は山武市商工会の副会長、理事などの役員を務めている。
他の会員からは協賛金拠出と引き換えでPRを行っているにも関わらず、一部の役員、しかも現職議員の事業所だけ無償でPRを行ったことは、PRと引き換えに協賛金を拠出した会員と、協賛金を拠出せずにPRを行わなかった大多数の会員との公平性を著しく欠いている。
また、現職松下市長の松下食堂は役員ではないが、令和3年に就任した現商工会長が令和4年山武市長選挙において選挙活動の中心的役割を果たしていたことが確認できる。
このような視点からも、山武市商工会の問題については一会員の立場からも引き続き指摘していく。