山武ジャーナルが新聞折込で配布されている広報誌の折込数が過大ではないかと指摘して以来、各方面から様々な反応が寄せられています。当事者の齋藤NSと読売新聞からは「事実無根なので記事を取り消して謝罪文を掲載せよ」という趣旨の「抗議書」が相次いで届きました。
山武ジャーナルでは写真とデータに加え、自ら販売店を回って折込広告を出稿し、聞き取りを行うなどのフィールドワークを通じて、「山武市新聞折込組合が市に申告している広報誌の折込数が過大ではないか」という結論を導き出しています。
「事実無根」というなら、せめて山武ジャーナルが示したデータや、聞き取り調査の内容について、具体的にどこが間違いなのか指摘していただきたいものです。
さて、山武市の広報誌、議会だよりは、山武市内に配達エリアを持つ新聞店による「山武市新聞折込組合」が一括して取りまとめ、代表の齋藤ニュースサービスが毎月必要部数を市に申告し、市はその部数を齋藤ニュースサービスに納品し、齋藤ニュースサービスが各販売店に分配する仕組みになっていることは、これまでの山武ジャーナルの記事で説明しました。
新聞販売店の受け持ちエリアは一般的に市町村の範囲と概ね一致していますが、一部市町村境を越境する部分もあります。そのため、山武市と隣接した八街、富里、横芝光の新聞販売店の内、山武市内に配達エリアを持つ店舗はこの組合に加盟しています。
そのうちの一つに、横芝光町の「YC(読売センター)横芝光」があります。
YC横芝光を経営する「有限会社齋藤新聞店」は、成東の齋藤ニュースサービスと同じく齋藤逸朗氏が代表を務めています。
読売センター横芝光=(有)齋藤新聞店の販売部数のうち、約10%が山武市分?
平成31年3月時点で、YC横芝光の山武市の広報折込数は350部でした。広告代理店などが公開していた同じ時期の同店の読売新聞販売部数は3,200部です。
同店は千葉日報の販売も行っていると思いますが、あいにく千葉日報は現在発行部数を公開していません。かろうじて6月14日の日経新聞に「2019年1月時点の公称発行部数は14万5150部」という記述がありましたので、これを手がかりに千葉県全世帯に対する千葉日報の普及率を求めます。今現在の千葉県の世帯数は2,757,712ですから、割り算をすれば5.26%です。
それを横芝光町の世帯数8,638に当てはめれば、横芝光町における千葉日報の販売部数は455部程度ではないかという推定が成り立ちます。
さらに、横芝光町では朝日新聞の販売店ASA横芝光も千葉日報を販売しています。ASA横芝光は朝日の他、毎日、産経、日経、東京の各紙も販売しており、合計で1,850部です。
横芝光町に新聞販売店はこの2店しかありませんので、YC横芝光の3,200部と合わせれば千葉日報を除く横芝光町の新聞販売部数が5,050部であることがわかります。シェアで言えば、YC横芝光が63.4%、ASA横芝光が36.6%です。
455部をこのシェアに基づいて分けると、YC横芝光は288部になります。ざっくり多めに見ても、YC横芝光が販売している千葉日報の部数は多めに見て300部程度ではないかという推定が成り立ちます。
読売新聞の販売数が3,200部ならば、YC横芝光の販売部数は千葉日報を含めて3,500部になりますが、そのうち山武市分の部数が350部ですから、YC横芝光の販売部数の内10%が山武市内ということになります。
新聞販売店のエリアマップを見てみれば
では、YC横芝光は山武市内にどのくらいの配布エリアを持っているのでしょうか
横芝光町は山武市の半分より少し小さい67.1平方キロメートルに、22,665人の人口を有しています。世帯数は8,638世帯です。
基本的に横芝光町が営業エリアであるYC横芝光が、一部山武市に販売している部数が10%を占めているのであれば、山武市内にそれなりの配布エリアがあるに違いありません。
そこで山武ジャーナルは複数の広告代理店が提供する新聞店の「エリアマップ」を入手して確認してみました。(本当はWEB上に掲載して読者の皆様にもお見せしたいのですが、著作権の観点から控えます。自分の目で確認したいという読者の方には、個別にご連絡をいただければお見せします。)
すると驚くことに、YC横芝光が山武市に越境しているエリアは、松尾町広根地区のごく一部の水田しかありませんでした。むしろ山武市の販売店であるYC松尾が、横芝光町の鳥喰地区や中台地区などに越境していました。
好意的に解釈して、面としての配布エリアはなくとも市町境が凸凹になっているようなところでYC横芝光が山武市の世帯に配達しているところがあるのかもしれません。
しかし、それが全店の販売部数の10%に当たるというのは・・・・
山武市内に配布エリアがあるエリアマップを発見!!
これは本来どうなのかという話なのですが、さらに調べを進める中でエリアの境が異なる別のエリアマップを提供している代理店がありました。どちらが真のエリアマップなのかという問題はあえてここではスルーして、少しでもYC横芝光に好意的にこちらのエリアマップで再度検証したいと思います。
こちらのバージョンでは先ほどの水田のほか、松尾町武野里地区の一部と、松尾町八田地区のうち金刀比羅神社から国道126号線と旧道が合流するごく一部の地域と総武本線の海側の水田部分がYC横芝光の配布エリアになっていました。
松尾町武野里地区は前回の国勢調査の数字で115世帯なので、多めに見て100世帯がYC横芝光の受け持ちと考えます。
八田地区の当該エリアについては、住宅地図で確認したところ住宅が100件少々といくつかの会社や工場しかありませんでした。アパートなども皆無ではないのでもう少し多めに見積もっても良いかもしれませんが、前の国勢調査で八田地区は486世帯だったことも考慮しても、かなり贔屓目に見て150件といったところではないでしょうか。
これら合わせて、山武市ないで多めに見て250世帯程度のエリアがYC横芝光の受け持ちと考えられます。
このエリアで350部の読売新聞を販売しているのであれば、金刀比羅神社の周りと武野里に住んでいる人は全世帯もれなく読売新聞を購読し、一家で2部以上契約している世帯も少なくないといった状況になってしまいます。
数字は物語る
齋藤ニュースサービスが山武市に提示したYC横芝光の350部という数字について様々な見方から考えてみましたが、ここで少しまとめてみましょう。
・YC横芝光が山武市に配布する350部は、配布エリアが横芝光町である同店の販売部数の10%。
・YC横芝光が山武市に持つ配達エリアの世帯数は、限りなくゼロに近いか、かなり多く見積もっても250件程度。
・YC横芝光は山武市のごく一部の地域の250世帯(かなり多めに見て)に対して140%という奇跡の契約率を誇りながら、メインの横芝光町では全世帯の36%程度しか販売できていない。
(ちなみに、読売新聞が公表している千葉県における現在の読売新聞の世帯普及率は28.08%だそうです。)
「YC横芝光の山武市内の折込部数が350部」という数字について、様々なデータを基に検証すると、現実にはありえない結論が導き出されてしまいます。つまり、このことが意味するのは、そもそもの「350部」が欺瞞ではないのかということです。
齋藤ニュースサービスが、山武ジャーナルの記事が事実無根で謝罪を要求するのであれば、その前にYC横芝光の350部についても納得できる説明をしていただきたいものです。