議決前の計画案を市内に全戸配布したことが問題となっている山武市の小中学校統廃合問題で、新たな疑惑が浮上した。
平成28年1月に議決前の不適切な手続きで配布されたリーフレットで市民に対して初めて閉校の方針が示された蓮沼中学校だが、すでにその時には岐阜県のN航空専門学校誘致の話が進んでいたことが議会関係者への取材で明らかとなった。
市は平成27年12月ANA総研を訪問し、後日N航空専門学校の視察受け入れを決定。翌1月には日向小学校、山武西小学校、成東中学校、蓮沼中学校で視察を実施した。
視察の結果、航空機の離発着ルート下にある蓮沼中学校が好感触であったことから、平成28年4月には椎名市長が学校側との意見交換の際に積極的に受け入れを進めたい意向を伝えたという。
専門学校誘致に際し、山武市は土地、建物を無償又は安価で賃貸借し、グラウンドのアスファルト舗装、車庫の整備、教室の改修などの費用を負担。また、学生募集のためのPR等に協力することが条件として挙げられている。
平成27年11月25日に可決した「山武市小中学校の規模適正化・適正配置基本方針【成案】」には、松尾中学校と蓮沼中学校の統合について以下の様に記載されている。
今後の課題
・2校が統合することにより、通学区域が広範囲となり生徒の負担が大きくなります。
・2校が統合することにより既存の学校施設を使う場合は、老朽化に伴う改修や教室数を確保するため の増改築等の改修も必要になります。なお、統合後の学校位置については、保護者や地域住民などと十 分な協議が必要となります
・統合後、使われなくなる学校施設及び跡地の利活用については、地域における防災拠点施設の観点や 地域コミュニティの観点からも地域住民と十分な協議が必要となります。 36ページ参照
成東中学校のケースはこれまでも指摘してきが、松尾中学校と蓮沼中学校についても、統合の方針は示されたものの統合後の学校の位置については一切示されていないことが確認できる。
閉校後の蓮沼中学校の跡地利用について地域住民と十分な協議を行うことなく、市が平成27年12月にすでに動き始めていたとすれば、教育委員会が「あり方検討委員会」からスタートして約3年掛けてまとめた「基本方針」を全く無視していることになる。
平成27年5月19日に山武ジャーナルが椎名市長に成東中学校閉校について直接問いただした際、住民投票実施の提案に対して椎名市長は
「この問題は時間がないんです」
と返答していた。
この時小筆は「時間がない」という意味を理解することは出来なかったが、もし蓮沼中学校閉校の方針を専門学校の誘致ありきで進めようとしているのであれば、椎名市長の「時間がない」という言葉にも合点がいくのではないだろうか。
教育委員会がまとめた「基本方針」を無視する椎名市長のやり方に問題があることは言うまでもないが、そのことを一切指摘することなく椎名市長の方針にただ従うだけの山武市教育委員会も完全に形骸化している。
このような中で粛々と進められるのが、山武市の小中学校統廃合計画である。
学園ドラマなどで
「教育委員会に訴えてやる!!」
というセリフを聴くことがあるが、山武市においては
「教育委員会を訴えてやる!!」
そんな声が市民の間から聞こえてくる日もそう遠くなさそうだ。