山武市に急増のスリランカ人。その実像に迫る。

山武市に急増のスリランカ人。その実像に迫る。

山武市のスリランカ人、また増加して373人に

令和元年11月末日現在、山武市のスリランカ人住民は373人となった。山武ジャーナルが前回報じた9月から26名増加した。また、全ての外国人住民全体でも1165人から1200人に増加してる。内スリランカ人住民の割合は31.1%と、前回9月より1.3%増加している。

山武市は東京オリンピックのスリランカ選手団事前キャンプ地としてスリランカ国と覚書を交わし、平成28年に「ホストタウン」登録を受けたが、その頃から50〜60人程度だった山武市のスリランカ人住民の急増が始まった。一度めの増加のピークは平成29年末から平成30年の初頃で、山武ジャーナルが確認した限りで297人。その後一旦減少に転じたものの、それからさらに増加して現在に至る。

平成29年までに増加したスリランカ人は、観光など短期在留資格で入国した後、入国管理局に難民として日本国政府に保護を求める「難民申請」を行い、半年後から国内での就労が認められるという制度を悪用する「偽装難民」だったが、平成30年に入ってこの制度が大きく見直され、現在では就労目的の「偽装難民」が新規に来日することは事実上なくなっている。

山武市内の急増したスリランカ人の来日目的は、オリンピックとは全く無関係で、日本国内での就労が目的である。

スリランカ人が経営する中古車ヤード、犯罪の温床との指摘も

しかし、彼らは人手不足の日本の労働市場に職を求めるのではなく、殆どのスリランカ人は高い塀に囲まれた「ヤード」と呼ばれる場所に中古車を集め、解体して輸出する仕事を行っている。

千葉県内に中古車ヤードは500以上あるといわれ、全国一である。

千葉県警は中古車ヤードについて次のように説明し、不法ヤードについての情報提供を求めている。

千葉県には、全国で最も多い約500箇所のヤードが存在しており、その一部のヤードが、国際犯罪組織による盗難自動車の解体・不正輸出のための作業場となっているほか、不法滞在外国人の稼働・い集場所や薬物の使用・隠匿場所として利用されるなど、犯罪の温床となっている実態が認められ、治安上の脅威となっています。

このため、ヤードの実態解明に努めるとともに、不法ヤードに対しては、各種法令を適用した検挙・解体を徹底するほか、県等関係機関と連携を図り、不法ヤード化の防止に取り組んでいます。

【作業員宿舎と鉄板等で囲まれたヤード】

千葉県警ホームページより

山武市内でも「外国人が敷地内のガレージに立ち入り、車のワイパーにチラシを挟んでいった」「畑から戻ると外国人が作業場の農機を物色していた」といった声が聞かれ、治安の悪化を心配する市民も少なくない。

実際に、山武市や近隣の八街市などでヤードがらみの犯罪は度々報道されている。ブローカーが盗難車を市場価格より大幅に安く中古車ヤードに転売するという手口で、警察が運良くヤード内で盗難車を発見しても、ヤード経営者は「私はお金を払って買い取った。盗んだものとは知らなかった」と言い逃れをするものである。

法人登記して「経営・管理ビザ」を取得。

「偽装難民」での就労が事実上不可能となった後は、合同会社などの新規法人や、スリランカ企業の日本法人を設立し、法人の取締役になることで、日本国内でその法人の業務を行うことが出来る在留資格である「経営・管理ビザ」を取得して来日する手法に変わっている。

中古車関係の業務を行うとするその様な法人が、現在山武市内に少なくとも150社程度確認できる。

この様な手法で在留資格を得ることは決して違法ではないが、「偽装難民」はどの様な仕事でも出来たのに対し、「経営・管理ビザ」ではその法人の業務以外は資格外活動となるため、農家や工場の手伝いなどで賃金を得るようなことを行えば違法となる。

中古住宅に8社のスリランカ企業が法人登記。20名以上ビザ取得か

山武市松尾町借毛本郷にあるこの民家には、中古車輸出入などを行うスリランカ企業の日本法人が8社登記されている。8社の取締役には20名以上の外国人が登記されており、「経営・管理ビザ」を取得したとみられる。

登記されている図面によれば2LDK程度の物件と思われるが、ここで8社の外国企業の日本法人の業務が行われているとは考えにくい。近所の住民の話でも、普段は殆ど人の出入りはなく、たまに来る人はいるが外国人ではなさそうとのことであった。

また、この8社のうち5社については、東金市求名に住所をもつ同じ日本人が代表となっており、同姓同名の人物が2016年に城西国際大学に在籍していたことが確認できた。

これらの法人は、「経営・管理ビザ」取得のための方便として登記されたものである可能性が非常の高いのではないだろうか。

日本のビザ取得に200万円?

山武市内のスリランカ人事情を知る人物によると、スリランカ人が日本のビザを取得するためにブローカーに支払う金額の相場は200万円程度という。200万円支払えば、すでに日本に登記されている企業に取締役として登記され、書類が整ったらスリランカに送付され、その書類を持って在スリランカ日本領事館で申請すれば程なくビザ発行され、合法的に来日出来るという訳である。

とはいえ、資本金500万円程度の合同会社や外国法人の日本法人に、取締役が10人もいるのは不自然なので、1社あたりの取締役は2〜4人程度としている例が多い。必然的に多くのスリランカ人に経営・管理ビザを取得させるためには、受け皿となる法人が増えていくことになる。

同一住所に8法人、同一の日本人が5社の代表という事例は、ピンポイントで登記情報を確認したために発覚したもので、名義貸しによる法人登記の問題は、恐らく氷山の一角であると思われる。

問題の切り分けを

山武市のスリランカ人急増問題は、オリンピックとは切り離して考えるべきである。

オリンピックを通じてスリランカ国と交流を行うのは、大変素晴らしいことかも知れない。

しかし、だからといってスリランカ人が出入国在留管理法の盲点を突くような手法で来日し、千葉県警も問題としている中古車ヤードを広げて行くことまで歓迎する必要があるだろうか。

優れた技能を持つ外国人が、日本社会で合法的にその能力を生かして活躍して貰うのはありがたいが、逆に違法行為を行う外国人は法に則って出て行って貰わなければならない。

そのことについて、山武市は「ホストタウンで交流しているスリランカ人だから多目に・・・」という視点ではなく、私たち市民は容姿や生活習慣の違いからくる偏見などではなく、あくまで法に則って判断していくのが大事ではないだろうか。

出入国管理及び難民認定法違反となる例として、

・定められた在留期間を超えて日本に滞在する。(オーバーステイ)

・経営管理ビザで在留許可を受けている外国人が、工場や農家でアルバイトする。(資格外活動)

・家族滞在ビザ取得者が、週28時間を超えてアルバイトをする。

・日本人の配偶者や、永住者・定住者並びにその配偶者以外の外国人が、スナック、バー、キャバレー、パチンコ店、麻雀店、ゲームセンター等の風俗店で働く。

などが挙げられる。

この様な例が確認されるか、その疑いがあると思われれば、出入国在留管理庁(旧入国管理局)に情報提供することが出来る。

出入国在留管理庁情報受付

また、中古車ヤードで

・深夜に解体作業をしている。

・ナンバープレートや車検証などが捨てられている。

・会社名や経営者が不明で営業実態もよくわからない。

・山間部や通りから奥まったところにあり、自動車廃材などが放置されている。

といった不法行為が行われている場合は、千葉県警察本部国際捜査課が情報を受け付けている。

 

山武ジャーナルは外国人を排斥しようといった考えは持っておらず、またその様な考えを支持することもない。

元々日本の入管法の趣旨は、日本人移民の子孫以外の外国人の就業は原則禁止で、平成30年の法改正により一定分野に一定数の「特定技能」という受け入れ枠が設定されたといえ、本来は日本人と同等以上の知識や技能を持った者に対して就業を認めるというものである。

例えば、日本の飲食店でシェフとして働く場合は「技能ビザ」を取得する必要があるが、条件として母国で10年以上の実務経験が必要で証明書の添付が必須であるし、貿易業務や理工系の技術者、外国語講師などとして働く場合に必要な「人文知識・国際業務ビザ」の取得は、大学やその業務に特化した専門学校など高等教育機関を卒業していなければほぼ不可能だ。

この様な「狭き門」をくぐり抜け、優れた技能や知識を持ち日本で合法的に活躍する外国人に話を聞くと、偽装難民やビザ取得目的の常識はずれな法人登記といった手法で、単なる金儲け目的に来日する外国人に対しては、一様に「一緒にされるのは迷惑だ」と憤慨する。

特定の国の国民だから、あるいは特定の宗教を信仰しているからという理由で、偏見もって外国人と接することには感心できないが、外国人は全て暖かく迎えなければならないといった「ポリティカル・コレクトネス」的な考え方も逆の意味で支持できるものではない。

現にEUではその様なポリコレ的な考え方が蔓延した結果、アフリカや中東から数百万人の難民が押し寄せ、各国の財政に大きな負担が強いられるだけでなく、パリの街に野宿する難民が溢れる様な状況を招き、華やかだったヨーロッパ文化の破壊も急速に進んでいる。難民問題は英国がEUを離脱しようとする理由の一つともいわれている。

外国人の受け入れは、それだけ社会に重大な影響を及ぼす問題である。

山武市ではホストタウン登録を切っ掛けに山武市の予算で設立・運営されている「山武グローバルセンター」のホームページを見ると、あたかも山武市自体が外国人の流入を促進しているかのように、外国人向けに「山武に暮らそう」というコンテンツが多言語で用意され、実際に「山武に暮らそう」とやってきた日本語も英語も分からないスリランカ人に対しては、スリランカ人の臨時職員が転入手続きを始め諸手続を親切にサポートしてくれる体制となっているが、人口5万人そこそこの地方都市がこの様な事実的な外国人受け入れ政策に舵を取るのが如何に危険かなのことか、EUの状況などを見れば火を見るように明らかではないだろうか。

山武に暮らそう│WelCome to Sammu Cityのサムネイル
外国人向けに5カ国語で用意された「山武に暮らそう」

 

シンハラ語住民登録のサムネイル
スリランカの主要言語であるシンハラ語の転入手続き案内

オリンピックのホストタウンと外国人受け入れは、全く異なる次元の問題であるにもかかわらず、山武市はこれらをあたかも同一の文脈で扱っているのではないだろうか。東京オリンピック開催まで1年を切ったが、山武市がこのまま外国人の問題に対して甘く曖昧な考えで臨むのであれば、近い将来取り返しの付かない深刻な問題へと発展する可能性は否定出来ない。

山武市にとってこのスリランカ人急増問題が今後どの様な影響を及ぼしていくのか、更なる注視が必要だ。