なぜ人口減に苦しむ山武市で、スリランカ人住民だけ激増するのか?

急激な人口減が進む山武市で、スリランカ人住民だけが激増している。

データを確認できる平成25年(2013年)から比較すると、日本人の住民が55,625人から51,879人と7%も減少する中、スリランカ人住民だけが57人から276人に482%増という驚くべき伸びを示している。

山武ジャーナルにおいては昨年10月に「山武市内の外国人住民登録者数、スリランカ人が1年で80%増」と報じ、このまま年80%の伸びを続ければオリンピックイヤーの平成32年には山武市内のスリランカ人住民は1,600人を超えるという試算を載せたが、その後1年での伸び率はそれを上回る93%増となっており、この伸び率があと3年持続すれば山武市内のスリランカ人住民は2,000人に迫る勢いとなる。

人口減少の苦しむ山武市で、なぜスリランカ人住民だけが急増しているのだろうか。

 

山武市内に増加するスリランカ人。在留資格は「難民」?

外国人が日本で働いて生活しようとするのは大変困難である。日本は特別永住者や日本人の配偶者などの例外を除けば「原則的に」外国人労働者を認めていないからだ。

しかし、日本人と同等以上の報酬で、その国の人間にしか出来ない仕事に就く場合は、入国管理局に申請すれば在留許可を得ることが出来る。

インド料理店のインド人コックはインド料理を作る仕事をする在留許可、中華料理店の中国人コックは中華料理を作る仕事をする在留許可なので、もしインド人コックが中華料理店でアルバイトをしているのを入国管理局に見つかれば、資格外活動ということで取り締まりの対象となる。

外国人留学生もアルバイトをすることは可能だが週28時間以内という制限があり、当然ながら風俗営業などは禁止されている。

外国人が日本の一般企業に就職しようとすれば、単純労働は認められないので日本人と同等以上の高度な知識や技能を身に付ける必要があり、大学や専門学校を卒業しなければ在留資格を得ることは難しい。そのため多くの留学生たちは2〜3年日本語学校に通い、苦労して学費や生活費を工面しながら進学を目指す。

ところが、2010年以降、この様な認識は大きく変わった。

ここに10月2日付の毎日新聞の記事を引用する。

 

申請が急増 上半期8561人 目立つ就労目的(毎日新聞

 今年1月~6月末の難民認定申請数(速報値)が8561人(前年同期5011人)に達したことが1日、法務省のまとめで分かった。昨年1年間の申請数は統計を取り始めた1982年以降、初めて1万人を超えたが、今年はその1.7倍のペースだ。

 日本の難民認定制度は2010年3月に運用を改正。正規の在留資格がある人が申請すると、半年後に「特定活動」の在留資格が与えられ、就労が一律に認められている。難民か否かの審査が長引いた場合に申請者の生活が困窮するのを防ぐ人道的な配慮としての位置づけだ。

 法務省によると、この運用がきっかけとなり、就労目的と見られる申請が急増。10年に1202人だった申請者は翌年以降、過去最多を更新し続けて、昨年は1万901人にのぼった。出身国籍別の上位はアジアが中心で、特にビザ(査証)の発給要件が緩和されているインドネシアやフィリピンの増加が目立っているという。

 一方、1月~6月末の難民認定者数は3人。認定はされなかったものの27人が人道上の配慮を理由に在留が認められている。法務省幹部は「就労目的とみられる申請の急増で、本当に救済が必要な人の迅速な保護に支障が出かねない」と話す。

 法務省は15年9月から「母国の借金取りから逃げてきた」「日本で働きたい」などの正当でない理由による申請や、申請理由が前回と同じ再申請については迅速に処理。就労などを目的として申請を繰り返す人には就労や在留を認めない措置をとっている。しかし、申請数が処理数を大幅に上回る状況に変化はないといい、同省は申請者急増の原因となっている特定活動の運用を見直す方向で検討を進めている。【鈴木一生】

この記事にある通り、民主党政権時の2010年の制度改正で、難民申請者は半年を経過すれば一律に日本で自由に働くことが可能となった。現在難民申請から認定までには2年以上掛かっており、その間は自由に就労出来るだけでなく、健康保険の加入も海外旅行も認められる。審査の結果難民認定されなくとも、その後何度でも再申請が可能で、引き続き就労も可能。そのため一部アジア地域では「日本で難民申請すれば稼ぎ放題」という誤った認識が広まり、日本への入国から入国管理局への難民申請まで手配するブローカーも暗躍している。

これらの「難民」は、戦乱などから逃れ粗末なボートに乗って命からがら逃げ出して来るような、国際社会が保護すべき人々ではなく、出稼ぎ目的で飛行機に乗って来日し、在留資格を得る手段として難民を騙る「偽装難民」である。

現在、山武市に新たに住民登録を行うスリランカ人の殆どがこの「難民」で、それが日本で1年以上暮らせば国際的な定義では「移民」と呼ばれる。

毎日新聞の記事にはない難民申請者の国籍別上位10位は次の通りとなっており、スリランカ人の難民申請数は平成27年度から平成28年度で倍増していることが分かる。

平成26年

平成27年

平成28年

1

ネパール

1,291

ネパール

1,768

インドネシア

1,829

2

トルコ

845

インドネシア

969

ネパール

1,451

3

スリランカ

485

トルコ

926

フィリピン

1,412

4

ミャンマー

435

ミャンマー

808

トルコ

1,143

5

ベトナム

294

ベトナム

574

ベトナム

1,072

6

バングラデシュ

284

スリランカ

469

スリランカ

938

7

インド

225

フィリピン

299

ミャンマー

650

8

パキスタン

212

パキスタン

295

インド

470

9

タイ

136

バングラデシュ

244

カンボジア

318

10

ナイジェリア

86

インド

229

パキスタン

289

出典:法務省

山武市においては平成28年4月から1年間でスリランカ人は107人から193人に増加した。

平成28年度に日本に難民申請したスリランカ人の1割にあたる人数が、人口わずか53,000人の地方都市である山武市に住民登録を行っているというのは、もはや異常事態といえるだろう。

 

「リトルブラジル」群馬県大泉町は山武市の未来の姿か?

群馬県大泉町は約42,000人の人口の内、15%以上が日系ブラジル人などの外国人で占られている。

元々はバブル期に大手自動車工場などが人手不足を解消するために、例外として単純労働が認められる日本人移民の子孫である日系外国人の受け入れから始まった大泉町の移民政策だが、生活習慣の違いからの住民とのトラブルといった日常生活から、税の滞納や生活保護の増加で自治体の財政圧迫といった深刻な問題が山積しているという。

出典:テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」

 

現在の山武市は、53,000人の総人口に対してスリランカ人を含む外国人住民は963人の1.82%で、大泉町の水準である15%には6000人以上足りない。しかし、スリランカ人が今後現在の年90%増のペースを続ければ、以下の様な試算となる。

平成29年10月現在実数 276人
平成30年予測 524人
平成31年予測 996人
平成32年(五輪開催年)予測 1,893人
平成33年予測 3,597人
平成34年予測 6,834人

この様に、もし現在のペースでスリランカ人が増加し続ければ、山武市もわずか5年で大泉町と同水準の外国人割合となることになる。

大手自動車メーカーを始めとする複数の大工場を擁し、90億円以上の町税収入があり地方交付税に依存していない大泉町と比較して、人口は1万人以上多いにも関わらず市税収入が50億円そこそこの山武市が、果たしてその状況に耐えて従来の日本人住民の福祉や公共サービスを維持していくことが出来るのだろうか。

しかし、山武市行政の姿勢は、残念ながらこの様な危機感は一切感じていないどころか、実質的な移民受け入れ政策に舵を切っているとしか見えない。

スリランカ五輪事前キャンプ招致を進めるために山武市が発足させた「山武グローバルセンター」のHPには、全ての漢字にふりがなを振り明らかに外国人向けの「山武に暮らそう」というページがアップされている。スリランカの公用語であるシンハラ語でも同じ内容のページが用意されている。

山武に暮らそう│WelCome to Sammu Cityのサムネイル

山武に暮らそう│WelCome to Sammu City

このHPを見て山武市にやって来た外国人は、出張所も含む山武市役所窓口では日本語どころか英語すら分からなくても、親切にシンハラ語で住民登録方法を教えてもらえる。

シンハラ語住民登録のサムネイル

山武市役所住民課に用意されているシンハラ語の住民登録票記入例

 

 

昨年9月26日の千葉日報には、次のような記事も掲載されている。

快適な長期在住を支援 外国人の就業も見据え 日本語教室 【山武で広がる国際交流 教室体験リポート】(下)(千葉日報:2016年9月22日 18:45 | 有料記事)

 学習の大きな目的は円滑な就業だ。来日3年目で八街市から通うテジャサ・マウダエルワさん(33)は「勉強していい仕事を見つけたい」と力を込める。来日したばかりという山武市内の会社員男性(47)は「自分は英語なら話せるのに、日本人の多くは英語ができないから」と職場で意思疎通を図りたいことが受講理由という。

外国人の就労に、センターの石橋昌美事務局長は「(地元の)人口が減る中、今後労働力を外国人に頼る部分が増えることもある」と指摘。同センターが目指す「外国人の就業支援」「地域住民との良好な人間関係構築」への取り組みは、ゆっくりながら大きな一歩を踏み出した。

財務省から出向の中野前副市長が立案し、学歴詐称が発覚した椎名千収市長が推進するスリランカ五輪事前キャンプ招致事業が、この様に実質的な外国人移民受入推進政策に繋がっているのが現実だ。

しかし、市内に有力な外国人労働者の受け入れ先を持たず、財政基盤も極めて脆弱な山武市がこの様な政策に舵を切ったことが、将来に渡って山武市に大きな禍根を残すことにはなるまいか。

異なる神を信仰し、食生活やゴミ処理といった日常生活においても大きく異なる価値観をもつ外国人と共生していくことは決して簡単なことではない。

「異文化交流」「多文化共生」「グローバル化」といった耳障りの良い言葉を並べ立て、五輪が終わった後の山武市が大泉町の様な問題を抱え込まなければならない状況になれば、一体誰が責任を取るというのだろうか。

雨坪地区のゴミ集積所

 

山武市は実質的な移民受入政策を転換できるのか?

山武市の実質的なスリランカ人移民受入政策は、スリランカ五輪事前キャンプ招致事業がきっかけとなっているのは間違いないだろう。

本来五輪基準の練習場もホテルも持たない山武市は「ホストタウン」としての資格はないが、中野前副市長が財務省出身の五輪組織委員とのパイプで事前に得た情報を基に、スリランカ国との2者間合意を結ぶことでホストタウンの第一次登録を果たしたことは、これまで山武ジャーナルで報じた通りである。

椎名千収市長は平成26年12月にスリランカ国に赴き、東京五輪事前キャンプ受入に関する覚書をスリランカ国と締結した。

国際法では国家間の合意事項は、それが「条約」と呼ばれようが「覚書」と呼ばれようが国内法に優先する。

国内法に優先するということは憲法よりも上位となるで、それだけに日本国が他国との間に条約を締結したり批准する場合は、当然国会での承認が必要である。

しかし山武市とスリランカ国との間の覚書について、山武市では議会承認を行った形跡がない。

覚書の内容は簡単にいえば「練習場も用意します。ホテルも食事も移動手段も全部用意します。だから東京五輪事前キャンプは山武市に来て下さい」というものであるが、山武市がホストタウンに登録されて事業の財政的な裏付けを得られたのはその2年後の平成28年12月で、この時点ではそもそもホストタウン事業は単なる非公式な構想段階でしかなかった。

つまり、椎名市長は国内法に優先する外国との覚書を、財政的な裏付けも議会承認もなく、中野副市長の書いた五輪事業招致のシナリオを実践するために、市長権限のみで交わしてしまったのである。

ホストタウン登録で交付税が欲しいばかりに、「後進国」と見下してスリランカ国に事前キャンプ招致を持ちかけたのは山武市側であることはこれまで報じた通りである。

平成26年4月の教育委員会会議。スリランカを「後進国」と見下して接触を図った事が確認できる。

 

もし今後山武市に将来的に実質的なスリランカ移民がさらに増加し、公共サービスや福祉政策に支障が出るような事態を招く事態となったとして、元々はホストタウン事業のために利用しようとした側の山武市が

「こんなに来られても困るので、もうこれ以上は来ないで下さい。」

という政策に転換することは果たして可能だろうか?

お祭り気分で飛びついたとしか思えない山武市の五輪ホストタウン事業だが、これが将来どの様な結果を招くことになるか、そしてその責任の所在が誰にあるのか、山武市民は注視していく必要があるのではないだろうか。

最後に余談となるが、山武市と同様に小さな自治体がホストタウン登録を受けて注目された山形県村山市の東京オリンピック・パラリンピック推進係に確認したところ、事前キャンプ受入先のブルガリア人住民が増加するという現象は一切確認出来ないとのことである。