山武市内の新聞販売数が平成31年初から3000部減少し、13,550部となっていることが広告代理店の資料などから分かった。
内訳は以下の通り
新聞名 | 販売部数 | 増減数(年初比) | 増減率 |
読売新聞 | 8,200 | −1,150 | −12.3% |
朝日新聞 | 3,200 | −200 | −5.88% |
毎日新聞 | 600 | −1,000 | −62.50% |
産経新聞 | 800 | −600 | −42.86% |
東京新聞 | 300 | 0 | 0 |
日本経済新聞 | 450 | −50 | −10% |
計 | 13,550 | −3,000 | −18.13% |
*千葉日報は発行部数非公開で、ABC協会にも加盟していないため、この中には含まれない。
山武ジャーナルでは読売センター成東店頭で配達されない大量の新聞が古紙として処理される現場を確認したことなどから、広報誌の折込を独占的に請け負う「山武市新聞折込組合」が、水増しされた折込部数を元に山武市に対して折込料金を請求している可能性を指摘した。
新聞社の収益の柱の一つが広告収入だが、広告料金は発行部数が多いほど単価を上げることが出来るため、販売店に対して優越的地位を乱用して実際の販売数以上の新聞を卸し、発行部数を水増しする行為が新聞販売店と新聞社との裁判記録などで明らかになっている。
また、折込広告は販売店独自の収益となるが、新聞社から販売契約数以上の新聞を仕入れても、その分の折込広告料を得ることで仕入れコストを上回る利益を得られる場合もあるため、積極的に過剰な仕入れを受け入れたり、自ら過剰な仕入れを行う販売店も多いという。
その様な背景を踏まえて考えた時、この数字の減少が純粋に山武市民の読者減少を反映したものなのか、山武ジャーナルの指摘あるいは別の理由で、今まで水増ししていた販売部数を実態に近づけるために調整を行ったのかは確かめるすべがない。
山武市広報折込数も1,909部減
令和元年11月の広報折込部数は15,926部と、山武ジャーナルの指摘する前の平成31年2月の17,835部から1,909部減となっている。
市内の販売店の部数合計より多いのは、市外の販売店が一部山武市内に配達エリアを持つためとのことであるが、市内の販売数が3,000部減少しているのに対し、広報の折込数だけ1,900部しか減少していないのは不自然である。そこで、市内販売店と市外販売店の部数を比較したところ、以下のようになった。
なお、新聞折込組合が山武市に報告している折込数は販売店ごとであり、一つの販売店が複数の新聞を取り扱っているため新聞ごとの集計ができないため、市内、市外の販売店のそれぞれ合計数を示す。また、この中にABC部数に含まれない千葉日報の数字も含まれているが、新聞報道などによる千葉日報の推定発行部数は千葉県内における日経新聞の発行部数とほぼ同規模なので、500部程度と考えて差し支えないと判断する。
山武市新折込組合が申告した広報さんむの折込数
平成31年2月 | 令和元年11月 | 増減数 | 増減率 | |
市内販売店計 | 15,830 | 13,970 | ー1,860 | ー11.75% |
市外販売店計 | 2,005 | 1,956 | ー49 | ー2.44% |
計 | 17,835 | 15,926 | −1,909 | −10.70 |
これを見ると、市外の販売店の減少率が市内の販売店に対して極端に少ないことがわかる。新聞販売数の減少が純粋に読者の減少であるとすれば、これほど極端な違いは俄に考えられない。
残紙処理現場が確認されたYC成東と経営者が同じで、隣町の横芝光町で読売新聞を2,900部、日経新聞を200部販売しているYC横芝は、ほぼその1割に当たる300部を山武市に配達していることになっている。その他にも、山武市内に500部配布しているとしながら、全店の部数が1,500部という販売店も存在する。
この様に数字を並べてみると、それが事実を表したものなのか、意図的に作られたものなのかよく分かる。
新聞折込組合の申告する数字は、山武ジャーナルが指摘する以前と比較すればより事実に近づいてきているとしても、依然として作られたものであると判断せざるを得ない。
折込部数が区長回覧全戸配布数を下回る
山武市では広報誌以外の広報手段として、月1回各自治会に回覧板を回している。その際、「全戸配布」の配布物が配布される事があるが、現在の配布数は16,031部で、新聞折込による配布数はこれを下回った。
紙の新聞の媒体価値は近年急速に低下し、新聞の発行部数は年々低下している。一方でインターネットなどの新しい媒体が急速に普及している。
新聞業界は押し紙、積み紙といった発行部数水増しで、見せかけの媒体価値を維持して来たものの、この度の山武市の状況などを見てもそれを維持することが極めて困難になっている。
これまでも山武市内における新聞購読率が自治体の組織率を大きく上回っていたのは、常識的に実態を表しているものとは考えられなかったが、山武ジャーナルの指摘以降新聞折込組合が正式にそれを認めた意味は大きい。
このまま減少傾向が続く新聞折込で広報を配布し続ければ、市民の手にますます広報が行き渡らなるのは明白だ。
新聞折込による広報配布は見直す時機に
山武市は広報の配布方法を見直す時機にあるのではないだろうか。
現在広報誌は毎月1日に配布されているが、月中ごろに配布される区長回覧に合わせて発行のタイミングをずらすことはそれほど難しいこととは思えないし、配布方法の変更によるコスト増も、これまでかかっていた折込費用や、配布されずに処分されていると考えられる印刷コストと相殺してあまりあるものであろう。
高齢化が進み、地域での独居の高齢者世帯の見守りなどもより重要になってくると考えられるが、区の班長が月に1回広報誌を持って回ることも、そういったコミュニケーション促進の一助となるかもしれない。もちろん、区長、班長の負担を考慮して、配布でなく回覧として回しても良いだろう。
また、広報誌や議会だよりは市のホームページでPDFファイルとして公開されているし、「マチイロ」というスマートフォンアプリでも閲覧が可能となっている。こういった紙以外のメディアへのシフトも有効だ。例えば、山武市では「安心安全メール」という防災情報のメーリーングリストを運営しているが、これに月1回「広報さんむを更新しました」とリンクを送信するだけで、登録者のスマートフォンに広報誌のPDFファイルを届けることがすでに可能な状態になっている。
この様な便利な新サービスを知らない市民はまだ多いが、地道に広報活動を行い普及すれば、将来的に紙媒体の発行・流通のコストを大幅に削減する効果も期待できるのではないだろうか。