山武ジャーナル

【コラム】4年前の4月9日の出来事

今日は私が山武ジャーナルを始めようと考えたきっかけになる出来事について書きたいと思います。

4年前にも山武市では市長選挙が実施されました。投票日は4月20日でした。

選挙告示に先立ち、東金JC主催の立候補予定者の公開討論会が、4月9日午後7時にのぎくプラザで実施されました。

その際、椎名市長は「さんむ医療センターは何の問題もなく、黒字経営が続いています。なぜ、さんむ医療センターが選挙の争点になるのかわかりません」と発言しましたが、その同じ日に、さんむ医療センターでは緩和ケア病棟に入院されていたひとりの患者さんが、鎮痛剤の過剰投与という医療ミスのため亡くなられていたのです。

このことが初めて公表されたのは、4月20日の市長選挙が終わった後、各市議会議員に送付された5月1日付の文書でした。

私がこの事を知ったのは、奇しくも自分自身が胆石症の手術のため、さんむ医療センターへ入院する準備を始めていた時でした。

執刀して頂く予定の先生は個人的にもお付き合いのある方で、高い技術を持っている方であることを知っていましたので、それを聞いて予定を変更しようとまでは考えませんでしたが、それでも一抹の不安をおぼえなかったかといえばそうではありませんでした。

私の手術は無事成功し、3週間あまりの入院生活も病院スタッフの皆さんのお陰で楽しく過ごさせていただき、私自身は地元にこの様な病院があることのありがたさを実感しました。

私が退院した後も、この医療ミスの顛末が公表されることはありませんでした。

そこで私は事実関係を知りたいと思い、市の条例に基づき市議会議員に配布した医療ミスの報告書の開示請求を行いましたが、なぜか「不開示」という結果となりました。

納得できなかった私は、その決定に対して不服申立てを行いました。以下が私がその申し立ての際に添付した文書です。(職員の個人名のみ伏せ字としました。)

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(別紙:保健健第145号平成26年7月9日公文書非開示決定に対する不服申立)

不服申立の理由

1.さんむ医療センターの公共性
さんむ医療センターは山武市が設置する病院であり、山武市は同センターに対して一般会計から運営負担金として毎年3億5,000万円余りを拠出してます。
このことから、同センターは高い公共性を有していること、また山武市民の生命と健康を守る使命を有していることに疑問の余地はなく、本請求で求める同センターにおける医療事故の情報は、市民に対してきちんと開示されなければなりません。

2.本請求で得られる情報の重要性
さんむ医療センターは山武市民共通の財産であり、本請求は単に請求者一個人の知る権利の問題に留まらず、5万5千余全ての山武市民に対して正確に伝えられるべき情報です。
私たち市民が病気治療をどの病院で行うかという選択は、自らの生命と健康を守るため人生で最も重要な選択の一つとなる場合があり、その際に医療事故のあった病院を積極的に選択する人がいるとは通常考えられません。
同センターにおいて2014年4月に医療事故があった事実を市民の殆どは認知しておらず、それを知るのは病院職員や市職員、本請求文書により報告を受けた市議会議員などごく一部に限られます。また、報道は5月8日の毎日新聞千葉版において行われたのみで続報もなく、本件を報道によって知り得た市民もごく一部です。
この情報を知らない大多数の市民は、自らの命と健康のため「医療事故を起こした病院を選択しない」権利を侵害されていることになり、情報を知る一部の者と比較して著しい不利益を被っていることになります。

3.請求文書について
本請求で開示を求めている文書は、2014年5月1日付で市議会議員諸氏宛に椎名市長名で普通郵便にて送付されたものです。
市議会議員は山武市民の選挙によって選出された市民の代表であり、その議員全員に送付した文書であるならば、一市民である請求者に対して非開示とする理由は認められません。

4.「開示しない理由」についての疑義
a.「遺族への配慮を要する情報である」について
7月11日に健康支援課◯◯氏らからうけた説明によれば、本件について「あまり表に出さないで欲しい」いう遺族側の意向があるとのことでしたが、遺族の意思確認は市側では一切行っておらず、さんむ医療センターから受ける報告でのみで、その内容が正確であるかの検証は行っていないとのことでした。
そもそも本件については、医療事故を起こしたセンター側と、それによって死亡した患者の遺族側は、双方の利害が相反する関係にあります。
通常、医療事故が発生した場合「あまり表に出さないで欲しい」と考えるのは被害を受けた患者側でなく事故を起こした病院側です。
「遺族の意向」とされるものが、利害相反者たる同センターからの一方的な報告のみであるなら、その信頼性には著しく疑義があります。
また、仮にその様な遺族の意思があったとしても、それが設置者である山武市が同センターで起こった医療事故を市民に対して開示しない理由とはなりません。
本請求文書に記載されている患者の情報は、年齢、性別、余命の診断結果程度のものであり、個人情報に値するものはありません。それでも遺族に対する配慮が必要であるのであれば、その部分のみを非開示とすれば十分であるはずです。

b.「交渉に関する情報であり、開示することにより、当該事務事業又は将来の同種の事務事業の公正又は円滑な執行に支障が生ずるおそれがある」について
前項と同じく7月11日の説明の際、「鎮痛剤の過剰投与が患者の直接の死亡原因であるかはまだ分からない。」としながら、「交渉」について具体的に尋ねると補償についての交渉であるとの説明がありました。
一般的に考えると、仮に過剰投与が死因であるか特定できないのであれば、まずは補償の話ではなく医療ミスと死因の因果関係が争われ、補償の話はそれが認められた後となるはずです。
「交渉」の中身が「補償」の話であるのであれば、本件はすでに鎮痛剤の過剰投与が患者の死因であることが認められてた段階であると合理的に推定できます。
この様に健康支援課の説明には矛盾あるいは文脈の不整合が認められ、開示しない理由としての正当性に疑義が認められます。

5.本請求の意義
私は5月30日から6月18日までさんむ医療センターに入院し、胆石症の治療のために胆嚢の切除手術を受けました。1年以上前から胆石症の発作が何度かあり、掛かり付けの医師から手術を勧められ、この近くでは東千葉メディカルセンターかさんむ医療センターで受けられるとのことで、私はさんむ医療センター宛に紹介状を書いていただくようお願いし、5月22日に同センターで初めて診察を受けました。
手術を受けることを前提に、1週間後の5月29日に検査の予約をして帰ったのですが、私が本件を知ったのはその3日後でした。
本件は5月8日に毎日新聞千葉版のみでしか報道されておらず、インターネットニュースになった形跡もありませんので、人から聞かされるまで私がこのことを知る由はありませんでした。
私はたまたま執刀していただく予定の医師と面識があり、高い技術を持ち信頼できる方であることを知っていましたが、それでも医療ミスによる死亡事故を起こし、尚且つその情報をきちんと公表しようとしない病院で自分がこれから手術を受けると考えると、大変不安な気持ちになりました。
本件を知った後の5月29日は予定通り検査を受け、手術はもう少し先にしていただくよう打ち合わせて帰りましたが、その日の夜に重篤な胆石発作が起こり、夜間の救急外来から入院してそのまま手術を受けることになりました。
医師の皆さん、看護師の皆さんは信頼出来る方が殆どであるということは入院してすぐに分かりましたが、ミスの発生は個人の技術の問題だけでなくシステムによる所もあるので、点滴の輸液などは全てインターネットでどの様なものなのかを調べ、自分の病状にあったもかどうか確認していました。また、その当時テレビを賑わしていた東京女子医大で子供にブロポフォールを投与して死亡した事件のニュースなどを見たときなど、ふと不安になることが何度かありました。起こったことはともかく、少なくともきちんと情報を開示している東京女子医大の方が、さんむ医療センターより余程健全ではないかとも思いました。
その後私の手術は成功し、経過も順調で現在に至ります。
3週間入院して、さんむ医療センターは良いスタッフのいる良い病院であるという事が分かりました。遠くのきれいな病院が良いと考える人もいるでしょうが、私のように多少建物が古くても近所でしっかりとした技術で治療を受けられる病院のほうが良いと考える人は多いはずです。
私自身、今回の入院でさんむ医療センターが山武市民にとって大切な病院である事を再認識しました。それだけに、今回医療事故が起こってしまったことについては、市民に対して隠すこと無くきちんと事実関係を公表して謝罪し、その上で原因を分析し、今後同じミスを繰り返さないための対策をとり、それをもって市民の信頼を回復して欲しいと心から願います。
本件を市民にウヤムヤにして決着を図るようであれは、さんむ医療センターは永遠に私たち市民が安心して利用でき、また地域の宝として誇れる病院とはなりません。
病院設置者である山武市は、納税者、有権者たる市民に対して真摯に説明責任を果たし、市民の生命に直接関わる医療事故の再発防止に取り組んでいただくことを強く希望します。本請求による情報開示がその第1歩となることを心から願います。

以上、公文書非開示決定に対する不服申立に対し、何卒良識あるご裁可をお願い申し上げます。

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結果的には、この異議申立ても却下されてしまいました。

 

医療ミスは許されないことだとは思いますが、先生とはいえ人間ですからどうしてもミスや事故が起こることは仕方のない事かもしれません。大事なのは原因究明と、その後の再発防止の対策です。

恐らく遺族とは何らかの和解が図られていいると考えられますが、和解の条件などは一切表に出ることはありません。山武市は文書不開示の理由を「遺族の意思」としていますが、おそらくは和解条件の1つにそのような内容が含まれていると思われます。

しかし、さんむ医療センターは独立行政法人という組織形態ではありますが、山武市が設置し、毎年3億数千万円を山武市から拠出している実質的な公立病院です。

医療事故の和解といえども、市民・納税者に公表できないお金を支払うことは本当に許されるのでしょうか。

起こってしまった医療事故に対しては、遺族への慰謝料の支払いが当然ですが、民間の病院であればすみやかに和解して解決を図ることも一つの選択肢だと思いますが、公金が投入されている公立病院であれば、やはり事実関係や責任の所在を裁判で明確にし、判決に基づいて根拠の明確な慰謝料を支払うべきであると私は考えます。

4年前の医療事故の隠蔽に市長選挙の争点隠しの意図があったかどうかは不明です。

でもひとつ言えるのは、もしこのことを市民が知れば、選挙の結果は違ったものになったのかも知れないということです。

この小さな山武市の行政問題など、テレビや大手新聞は取り上げる価値もないと考えるかもしれません。

しかし、そこに住む私たちにとってはとても大事な情報です。

そのような情報を一人一人の市民の方に正しく伝えられる媒体があれば、市民の正しい総意でこの山武市はきっともっと良くなると考えたのが、私が山武ジャーナルを始めたきっかけです。

今回、私自身が県会議員補欠選挙に立候補しましたが、結果に関わらず、どんな立場であろうともその気持ちが変わることはこれからもありません。